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大阪高等裁判所「NTT事件」原告意見陳述書

 控訴人 木村 清一

  控訴審が始まるにあたり、控訴人木村が、意見陳述をいたします。
  「NTT事件」の地裁判決では、山田裁判長から原告3名を除く訴えがいずれも棄却されてしまいました。NTTで働く多くの労働者の苦悩を全く理解せず、労働者の人権の重みを顧みない判決に、私は原告席で怒りに震えました。
 本配転事件の直接原因となったNTT11万人リストラは、人件費を徹底的に削減させることを最大の目的としていたことは、地裁でも争いのない事実でした。当時のNTT持株会社の宮津社長が、「在籍出向では意味が無い、退職させ、30%の賃下げ、地場賃金なみに切り下げる」と言って憚らなかったことは有名な話です。彼はさらに、「進路に横たわっている大きな石、すなわち『人間の問題』を構造改革によってしりぞけたわけである」と「通信工業新聞」紙上(平成14年4月28日)でその「成果」を語っています。
 しかし、今日までの電信電話事業の発展を支えてきたのは、電電公社以来この仕事に誇りを持って働いてきた幾十万の労働者であり、けっして邪魔な「大きな石」などではありません。それにも関わらずこのリストラは、この一時代を築き上げてきた50歳以上の労働者を、有無を言わさず30%賃下げの「退職・再雇用」に追い込んだのです。これは30年、40年と精魂込めて通信事業に従事してきた者を遇する途ではありえません。さらに地裁判決は、行くも残るも地獄のこの「雇用選択」を、「社員は自由に選択をした」と判断しましたが、それはこの選択を迫られたすべての労働者の苦悩を全く理解しない不当なものです。控訴審においては、こうした「NTT事件」の基本的な性質を明らかにするため十分な審理を尽くして頂き、地裁判決を取り消して戴く事を、心からお願いいたします。
 次に、地裁判決が50歳代の労働者を遠隔地配転する不利益性をあまりにも軽視したものであることについて申し上げます。特に、控訴人後藤さんに関して述べさせていただきます。後藤さんの単身赴任期間は、既に5年3ヶ月になります。地裁判決は、原告後藤には「健康上の問題が認められ、規則正しい食生活とストレスの緩和できる環境整備が求められること(中略)被告においては、現在の原告後藤の健康上の状況を確認し、その状況を十分に踏まえて、時宜にかなった、適切な配慮をすることが求められる」と人道的観点を無視し得ず、異例の説を示されました。
 しかし、会社は、本年6月19日、後藤さんが引き続き単身赴任になることを承知の上で、7月1日付け人事で福岡への配転を打診してきました。
 控訴人後藤さんの福岡配転は、引き続き単身赴任となり、健康問題を含め事態は全く改善しない。むしろ単身赴任のたらい回しは、新たに配転のストレス、新しい住環境へのストレス、知らない土地での知らない人々との人間関係及び仕事のストレスなどが加わり後藤さんの健康破壊が危惧されます。これらのストレスで白血病発症のリスクも大きくなると、会社に再考を何度もお願いしましたが、会社は「人事異動は業務上の必要性」と言いきり、「後藤さんの健康に変化はない、症状が出ていない。発病したら大分へ戻す。」と全く誠意のかけらも無い態度で発病しなければ地元へ戻さないという人命を顧みないという驚くべき態度です。
 後藤さんは、5年前、全く知らない大阪への配転、初めて経験する単身生活への「不安」、また、3年前、独身寮から社宅へ引越し、シックハウス症候群による呼吸も出来ない発作にみまわれ「死をも予感した」恐怖心、いつおとずれるか知れない白血病発症の不安と恐怖心がよみがえり、福岡への打診のあと、不眠、食欲減退、動悸、高血圧などに加え、精神的な不安定状態になってしまいました。
 20日以降、毎日午前6時前後に私の携帯電話に「福岡へは行きたくない。どげんすりゃーいいんかのー」と何度も同じことを問い返すようになってしまいました。
 6月22日午後4時、後藤さんの精神状況を心配する仲間と相談して、心療内科を受診させることにしました。結果は最悪でした。「抑うつ症」と診断、「転勤辞令を契機とした強い不安、焦燥感が出現し、不眠、食欲不振が出現している」約30日間の休業通院加療を要するとの診断が下されました。
  今回の福岡配転が、健康に最も不安がある控訴人後藤さんにもたらした「抑うつ症」発症は、社員の健康に責任を負う会社が社員の健康を破壊した最もひどい非人間的行為として非難されなければなりません。
 同診断書を会社に提出してもなお、同日、5時15分に「福岡配転の内示」行為を行ったことは絶対許せません。さらに驚いたことに25日の発令日に「福岡配転」は延期するとしながらも、現職復帰したら要健康管理区分がBであれCであれ発令するとの態度です。控訴人後藤さんは7月19日、心療内科医院に出向き再診の結果、前回より厳しい休業通院加療3ヶ月と診断されました。後藤さんの、精神を破壊したのは、NTT西日本です。このような配転は労働契約の埒外であります。これが「不当な動機、害意をもった、命まで脅かす、いやがらせ、みせしめ」のための配転以外の何ものでもなかったことを雄弁に物語る「配転」事案でありました。
 控訴審にあたり、裁判長、裁判官の皆様にこうした事情をお汲み取りいただき、定年まで残り8ヶ月とせまっている控訴人後藤さんが一日も早く地元大分に戻れますよう適切に御判断をいただきますよう心から希求し、私の陳述といたします。
                                               以上

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