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                                 2007年(平成19年)2月5日


札幌高等裁判所第3民事部  御中




                                              被控訴人ら訴訟代理人

                                                    弁護士                       

                                                 弁護士                       

                                                   弁護士                       

                                                   弁護士                       

                                               弁護士                   

                                                   弁護士                       

                                                   弁護士                         


  本書面の目的
   本書面では、原判決の結論が基本的には正当であって、控訴人から  の原判決への総論 的批判が全く失当であることを明らかにすると共に、被控訴人から見た原判決の問題点、 とりわけ、本件配転命令が、被控訴人らが所属する通信労組及びその組合員である被控訴 人らへの明白な差別意識に基づく「見せしめ」の配転命令であったことを明らかにする。


第1  原判決の結論の正しさ

    原判決の結論とその正当性

    原判決は、結論において、本件での大リストラに基づく被控訴人5名の配転について
  は、いずれもこれを無効と判断し、5名のうち、石黒については、金100万円、その
  余4名の被控訴人については、金50万円の損害賠償(慰謝料)を認めたものである。


   被控訴人としては、後述する様に、原判決がその結論に至る理由について全てを首肯
  するものではなし、また、認定した損害額についても不満があるが、いずれにしても、
  原判決が、我が国を代表する巨大企業である控訴人会社が押し進めた本件大リストラに
  よる被控訴人らへの配転を明確に無効であると断罪した点については、これを高く評価
  するものである。

 2  原判決の判断の骨子
    原判決は、控訴人の主張していた勤務地、職種の限定の合意などの存在を認めず、
   また、年齢差別に当たる等の法令、判例違反等の主張を排除しており、これらの点に
   ついては、被控訴人としては、別途、批判を行なう予定である。しかしながら、少な
   くとも、本件配転について、被控訴人らの主張をほぼ全面的に受け入れて、被控訴人
   5名全員の配転について、権利の濫用に当たると判断した点は、極めて正当であっ
   て、十分に是認できるものである。
      そこで、本書面においては、特に、この権利の濫用についての原判決の判断内容に
   ついて、総論的な若干の検討を行なう。

    原判決は、次の様に判示した。(原判決57頁)
     「本件において、勤務地、職種の限定の合意等が認められないとしても、配転、特
   に転居を伴う配転は、労働者の生活関係に影響を与えるから、
使用者による配転命令
   が無制約に許されることにならない。
      そこで、当該配転命令につき業務上の必要性が存在しない場合又は業務上の必要性
   が存する場合であっても、当該配転命令が他の不当な動機、目的をもってなされたも
   のであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わ
   せるものであるとき等、特段の事情が存在する場合、当該配転命令は、権利の濫用と
   なる。そして、業務上の必要性は、当該配転先への配転が余人をもって容易に替え難
   いといった高度の必要性に限定されず、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者
   の能力開発、勤労意欲の高揚、業務運営の円滑化等の使用者の合理的運営に寄与する
   点があれば、認められると解される。

     上記の業務上の必要性等は、労働者ごとに異なるものであるから、原告らについて
   も、個別に判断する必要がある。」


     ところで、原判決が判示したこの判断枠組みは、いわゆる東亜ペイント事件の最高
   裁判決と基本的には全く同一であることは明らかである。

      被控訴人としては、後述する様に、この東亜ペイント事件の最高裁判決に無条件に
   賛成するものではないが、権利濫用の判断枠組みとしては、一応、尊重されるべきも
   の考えられるところ、原判決が、この東亜ペイント事件の最高裁判例の枠組みに従っ
   た判断をしたことは、概ね、首肯できるものである。

     原判決は、「原告らの配転は、権利濫用と認められるため、本件は配転命令の違法
   性に関するその余の主張を判断する必要はないものの、本件配転において、不当な動
   機や目的が存在したかについて付言する。」として、次の様に判示している。(原判
   決58頁)

    すなわち、「原告らは、本件配転は、被告の意向に従わなかった原告らに対する報
   復として行われ、転籍に応じないと異職種や遠隔地への配転が行なわれるという見せ
   しめの意味を持っていたと主張する。

     しかし、職種については、従来の業務の一部がOS化され、異職種へ配転されるこ
   とにならざるを得ない場合もあり得る。また、後記のように本件配転に業務上の必要
   性が認められる場合もある。そして、繰延型や一時金型を選択させることが被告の意
   向であることや原告らの配転が見せしめの意味をもっていたことを認めるに足りる証
   拠はなく、原告らの主張は採用することはできない。」(原判決58頁)


     詳細は後述するが、控訴人会社が、通信労組及び同組合に所属する被控訴人らに対
   し、明白な差別意識をもっており、本件大リストラ計画発表後、これに反対する通信
   労組との団体交渉を誠実に行なうことなく、大リストラを許容していたNTT労組と
   のみ交渉を行なっていたことや、本件配転命令において、通信労組の組合員である被
   控訴人らに対し、差別的に業務上の必要性の無い「見せしめ」の配転命令を行なった
   ことは、明らに不当労働行為意思の現れであったにもかかわらず、原判決が、この不
   当労働行為性を認定しなかった点は、本件の本質を的確に捉えたものと言えず、極め
   て遺憾なものである。
      本件被控訴人らを含め、通信労組及びそこに所属する組合員に対し、控訴人会社
   は、強烈な差別意識を有しており、労使協調路線のもと、本件大リストラを会社と一
   緒になって推進していたNTT労組とは誠実な交渉を行なう一方で、本件大リストラ
   に明白に反対をしていた通信労組との間では、形だけの不誠実な団体交渉に終始して
   いた。そして、実際の個々の労働者の配転命令においても、通信労組の組合員である
   被控訴人らに対し、見せしめの意図をもって、業務上の必要性の無い本件配転を命じ
   た(もっとも、控訴人は、右意図を隠蔽するため通信労組の組合員以外の「満了型選
   択者」に対しても業務上の必要性がないにもかかわらず、配転命令を発していた)も
   のであって、東亜ペイント最高裁判決及び原判決が判示するところの「不当な動機、
   目的をもってなされた」ことは明らかである。

      その意味で、原判決には、本件の違法配転の本質に迫ることは出来なかったという
   弱点を有しているものであり、控訴審においては、この点についての的確な判断が求
   められるものである。



    控訴人の原判決批判なるものについて

     ところで、原判決に対し、控訴人は、概略、以下のとおり、批判を加えている。
       まず、総論的な批判として、控訴人は、以下の様に、原判決を批判している。
         原判決は、一般に認められている上記判断基準(注  東亜ペイント最高裁判決)
    と同様な文言をもって判断するとしておきながら、その判断過程をみるに、全く異
    なった内容をもって判断の枠組みとしており、結果として、控訴人に対して「当該
    配転先への配転が余人をもって容易に替え難いといった高度の必要性に限定」した
    業務の必要性の立証を求め、その立証がないとして本件各異動には業務の必要性が
    ないとの結論を導いているものであって、その論旨は一般に認められている判断基
    準から著しく逸脱した不当な判断、あるいは、誤った認識のもとに誤った枠組みに
    よる判断をしている。(控訴理由書4、5頁)

       次に、そのような総論的な批判を前提に、控訴人は、原判決が、本件被控訴人の
    いずれについても、配置転換を行なうべき業務上の必要性が無かったという原判決
    を批判し、本件控訴人らの各異動は業務の必要性に基づくものであることは優に認
    められるとして、

         本件異動は、事業所数も取り扱う業務も著しく変化した本件構造改革後の控訴
     人内において、原判決も認めるとおり、本件構造改革等により控訴人における業
     務の一部がアウトソーシング(OS)化され、被控訴人らを他の業務に配転せざ
     るを得ない状況下において、被控訴人らを含む多数の社員を再配置するために行
     なわれたのであって、労働力の再配置の効率化及び企業運営の円滑化等の見地か
     らやむを得ない措置として容認しうるものであって、業務上の必要性は、十分に
     認められるというべきである。とするならば、本件被控訴人馬場、阿部、森、木
     内の本件異動及び被控訴人石黒に対する光IP販売プロジェクトへの異動につい
     て、労働力の適正配置とは認められないとした原判決は誤っているというべきで
     ある、と批判している。(控訴理由書3、4頁) 更に、
    ⒝  本件構造改革等により控訴人における業務の一部がアウトソーシング化されて
     被控訴人らの従事していた業務がなくなり、被控訴人らを他の業務に配置なさざ
     るを得ない状況の下において、当時の控訴人内の各事業所での配置の要請・必要
     にあわせて被控訴人らのスキルに出来うる限り沿う形で被控訴人らを各事業所に
     配置した本件各異動は極めて合理的であって、労働力の適正な配置であることは
     明かと言うべきである。多くの業務を外部委託したとはいえ、多数の人員が控訴
     人から流失した後の、各事業所における社員の再配置の必要性ともあいまって、
     本件各異動にはいずれも高度の業務上の必要性が存在していたことは明らかとい
     うべきである。控訴人の行なった本件被控訴人らの各異動は、上記東亜ペイント
     最高裁判所判決等に示された基準に合致するものであって、本件各異動は業務上
     の必要性に基づく異動であることは明らかである。(控訴理由書
4頁)
      という2点を特に強調している。

     なお、控訴人は、原判決が、控訴人の主張を正しく整理していない、あるいは誤っ
   た前提に基づき整理していると批判をしており、その趣旨には必ずしも判然としない
   ものもあるが、要するに、本件配置転換についての業務の必要性に関わる控訴人の主
   張について、その主張に含まれる各段階を捨象して整理して、その捨象した部分の欠
   落を前提にそれを否定する判示をしている
(控訴理由書6)というものようである。



   原判決の正しさ

     控訴人からの原判決批判は失当であること
        しかしながら、控訴人による原判決批判なるものは、牽強付会の独自の理屈に基づ
   くものに過ぎず、むしろ、為にする批判というべきものであって、何ら、原判決に対
   する的確な批判とはなっていない。

      以下、詳論する。

  ⑵  東亜ペイント事件最高裁判決の理解について
        まず、被控訴人としては、東亜ペイント事件(及び日産自動車村山工場事件最高裁
   判決)については、必ずしもその理論構成が明らかではない面もあるが、おそらく、
   労働協約や就業規則の一般条項を根拠として配転についての包括的な合意が労使間に
   存在しているという理論構成を採用しているものと考えられる。(学説の評価も、東
   亜ペイント事件の最高裁判決は、実質的に、包括的合意説に近いものという評価が一
   般的である。)
         しかしながら、東亜ペイント事件最高裁判決は、労働契約における合意内容(勤務
   地、職種等)について、当該労働者の職務上の地位や専門性やキャリア形成のプロセ
   ス等の具体的事情を一切無視した極めて漠然とした抽象的合意を想定している点で、
   現実の個々の労働契約の具体的な合意内容の探究・解釈を放棄しているという批判が
   妥当するものであると考える。従って、この最高裁判決には理論な難点が多いため、
   いずれ、その見直しが不可避であると認識している。

     また、この東亜ペイント事件の最高裁判決の判断枠組みを踏まえた実際の配転の合
   法・違法の判断においても、業務上の必要性については、「当該配転先への配転が余
   人をもって容易に替え難いといった高度の必要性に限定されず、労働力の適正配置、
   業務の能率増進、労働者の能力開発、勤労意欲の高揚、業務運営の円滑化等の使用者
   の合理的運営に寄与する点があれば、認められると解される」というように、文言上
   は、極めて抽象的な業務の必要性(例えば、勤労意欲の高揚、使用者の合理的運営)
   でも足りるかの如くの判断枠組み(判断基準)を定立している点で、社会常識に照ら
   して救済の必要性のある不当な配転を安易に合法化する余地が無いとは言えず、その
   意味で、現実の配転の合法・違法の判断枠組みとしては、具体的な判断基準となり得
   ない点でも問題が多いものであると考える。その意味で、やはり、いずれ見直しが不
   可避であると考えられるものであるし、また、この最高裁の判断枠組みを維持するに
   しても、個別事案への当てはめの際には、業務の必要性と労働者の不利益との間の、
   より具体的かつ緻密な利益衡量が必要である、理解している。

        更に、東亜ペイント最高裁判決の出された昭和61年(1986年)以降、育児介
   護休業法、男女共同参画基本法、次世代育成支援対策基本法などの法環境の変化もあ
   り、転勤とそれに伴う単身赴任についての社会的意識の著しい変化もあることから、
   そのような法環境や社会的意識の変化を踏まえた考察が不可避なものであって、東亜
   ペイント事件最高裁判決の文言を、表面的に理解し、その文言を形式的に重視するこ
   とは、厳に慎まなければならないと考える。

    それはともかく、この東亜ペイント事件の最高裁判決の枠組みに沿ったと考えられ
   る原判決の判断・認定には、後述する様に、控訴人の主張する様な誤りは全く無いと
   言わざるを得ない。


  ⑶  控訴人からの原判決批判とその誤り(東亜ペイント事件判決の理解の誤り)
        さて、控訴人は、東洋ペイント事件最高裁判決が、「使用者は、業務の必要性に応
   じて、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができる。」と判示している
   ことをもって、「使用者が業務上の必要性によって裁量によって異動できることが原
   則で」あって、「例えば、
当該配転命令につき業務上の必要性がない場合、当該
   配転命令が不当な動機、目的をもってなされた場合、若しくは労働者に対して通常
   甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき『等、特段の事情の
   無い限りは、当該配転命令は権利の濫用になるものではないというべきである。』と
   して、『特段の事情』として例外的に配転命令が権利の濫用になりうる場合について
   上記乃至を例示しているのであるから、上記各特段の事情は安易に拡張解釈され
   るべきではない。」と主張している。
      しかし、控訴人による東洋ペイント事件最高裁判決の解釈は、正に、牽強付会と言わ
   ざるを得ない。というのは、この最高裁判決では、労使間で明確な勤務場所の合意が
   ない場合に、配転すなわち、労働者の勤務場所の変更を命じる根拠は何かが重要な争
   点の一つだったのであって、その争点に対し、最高裁は、個別具体的な勤務場所につ
   いての労働契約上の合意がない場合には、労働協約や就業規則の一般条項に配転を命
   ずることができる旨の規定があれば、労働者の具体的個別的同意がなくとも、使用者
   側に決定権があること判示したものである。そして、そのことを、「使用者は、業務
   の必要性に応じて、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができる。」と
   判示したものにすぎない。従って、この最高裁判決の言うところの使用者の「裁量」
   というのは、当然ながら、使用者の恣意的な自由裁量などではなく、あくまでも、「
   業務の必要に応じ」た、限定された「(合理的な)裁量」に過ぎないものである。
       そうだからこそ、①の「当該配転について、業務上の必要性がない場合」には、当
   然ながら権利の濫用となるのであって、裁量が原則だから例外を安易に拡張すべきで
   はないというのは、極めて表面的な解釈・理解であって、明らかに誤りであると言わ
   ざるを得ない。
       しかも、この最高裁判決は、あくまでも、「当該」配転命令についての業務上の必
   要性を問題にしているのであって、使用者が当該労働者に対し配転命令を行なうに至
   った全体的事情としての業務上の必要性のみで、「当該」配転命令の業務の必要性が
   無条件に肯定されるものではないことに特に、留意すべきである。


     控訴人からの原判決批判とその誤り(日産自動車村山工場事件判決の理解の誤
   り)

        なお、控訴人は、日産自動車村山工場事件の東京高裁判決及び最高裁判決の判示を
  もって、あたかも、個別の事情を一切考慮する必要性がないかのごとく主張している
  が、これも全く誤った理解であって、牽強付会の理屈である。

   すなわち、この日産自動車村山工場事件は、村山工場において従来行なわれて来た車
  軸製造部門が栃木工場へ全面的に移転し、村山工場では新型車を製造するという、生産
  体制の変更計画に基づく従業員の大幅な配置転換の事例であって、村山工場内(及び通
  勤可能圏内の他の職場)で各労働者の経歴や経験・技能を考慮した配置転換を行なうこ
  とがそもそも事実上不可能であるという特殊な事情が存在しているのであったからこ
  そ、「対象者全員についてそれぞれの経験、職歴、技能等を格別に斟酌することなく全
  員一斉に村山工場の新型車生産部門に配置換えすることとしたのは、労働力配置の効率
  化及び企業経営の円滑化等の見地からやむをえない措置として容認しうるとした原判決
  の判断は正当として是認しうる」としたものに過ぎない。しかしながら、本件では、被
  控訴人らの個別の業務の必要性に応じた勤務場所や配転先が、道内に限っても多数存在
  しており、そこには全労働者を一斉に村山工場内の新型車生産部門へ配置換えしたのと
  同様に、例えば、北海道内の対象者全員を一斉に、ある営業所に配置換えしなければな
  らないといった極めて特殊な業務の必要性がある訳ではない。

   従って、「全社的な事情に基づく大量の人事異動が同時期に行なわれた」という極め
  て表面的な類似性のみを根拠に、本件とは明かに全く事情を異にするこの日産自動車村
  山工場事件での東京高裁、最高裁の判示を一般化し、本件に当てはめようとするのは、
  正に牽強付会の理屈であって、全くの誤りである。


    控訴人からの原判決批判とその誤り(個別的判断への批判の誤り)
   この関係で、控訴人は、原判決が、「業務上の必要性等は、労働者ごとに異なるもの
  であるから、原告らについても、個別に判断する必要性がある。」とした点を論難して
  いる。(控訴理由書
13頁)
    しかし、東洋ペイント事件の最高裁判決を、予断無く素直に読めば、同判決は、「本
  件についてこれをみるに、名古屋営業所の金栄主任の後任者として適当な者を名古屋営
  業所へ転勤させる必要があった」などして、あくまでも、「当該」配置転換命令におけ
  る業務の必要性を問題にし、これを検討していることは明らかである。また、日産自動
  車村山工場事件判決においても、村山工場内(及び通勤可能圏内の他の職場)で各労働
  者の経歴や経験・技能を考慮した配置転換を行なうことがそもそも事実上不可能である
  という特殊な事情が存在していたために、一見すると、業務の必要性については、個別
  に判断していないかのごとくに見えているものに過ぎない。
     従って、本件とは明かに事情の異なる日産自動車村山工場事件での東京高裁や最高裁
  の判示を金科玉条の如く引用する控訴人の主張(原判決批判)には、何らの説得力も無
  い。
       原判決は、東洋ペイント事件の最高裁判決の枠組みに従って、適正妥当な判断を行な
  ったものなのである。


    控訴人の原判決批判とその誤り(控訴人の主張整理の欠落という批判の誤り)
     控訴人は、被控訴人馬場の例を挙げて、控訴人の原審での主張を、原判決は、不当に
  検討を怠っている旨批判している。(控訴理由書17頁)
     しかし、原判決は、被控訴人である当該馬場への当該配転命令における業務の必要性
  の有無を判断するに際して、その判断にとって必要にして十分な検討を加えているもの
  であって(原判決62,63頁)、そもそも、控訴人の主張する全ての事情を形式的・網羅的
  に逐一検討しなければならないというものではない。
     確かに、原判決は、この6263頁では、控訴人の主張を、簡潔に整理しているもの
  の、いわゆる主張の整理に関する判示部分においては、控訴人が十分検討考慮していな
  いと論難する点についても、「ウ  配転の業務上の必要性」の項目で詳細かつ的確な整
  理を行なっており(原判決3031頁)、そこでの控訴人の主張の整理を踏まえて、検討
  ・判断しているものである。
    よって、控訴人の論難は、明らかに的外れであって、言わば、自己の主張が認められな
  かったことへの不満の表明に過ぎず、批判としては全く失当である。

   控訴人の原判決批判とその誤り(各営業支店からの人員要請について判断の脱漏と
  いう批判の誤り)
     控訴人は、原判決が、本件異動にあたっては各営業支店からの人員要請があり、人員
  不足の現場に人員を配置することは労働力の配置であるのに、原判決は、この点を判断
  していないと論難している。
     しかし、原判決は、その主張整理において、例えば、被控訴人馬場における「ウ 
  転の業務上の必要性」の中で、苫小牧支店においては、販売経験のある人材の必要性が
  あった旨を指摘しており、実質的に、控訴人の主張を的確に整理しているものであっ
  て、そこには、何らの判断の脱漏もなく、控訴人からの批判は、ここでも、明らかに失
  当である。

   控訴人の原判決批判とその誤り
       控訴人は、被控訴人の馬場を例に挙げて、原判決は、結局のところ、「異動における
  業務の必要性の判断にあたっては
『当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難
  いといった高度の必要性に限定すること』を使用者に求めているに等しく、不当であ
  る。」などと批判している。(控訴理由書18頁)

     しかしながら、このような批判は、「為にする」批判であって、失当である。
     すなわち、原判決62頁を予断無く読めば、控訴人会社の主張していた被控訴人馬場に
  おけるの「業務の必要性」なるもの(「北海道内で再配置が必要とされ、かつ、CUS
  TOMで工事などの手配ができる被告従業員の中で、販売経験があるのは原告馬場1名
  のみであり、販売経験を必要としたのは、AMや顧客の信頼を得ることができるためで
  ある」)について、具体的根拠を示して、その「業務の必要性」なるものが、「労働力
  の適正配置」であったと認めることはできず、また、「業務の能率(の増進)」、「業
  務運営の円滑化」及び「勤労意欲の高揚」といった控訴人会社の「合理的運営に寄与す
  る点も認められない。」(原判決
6263頁)としたものであって、原判決は、「余人を
  もっては容易に替え難い必要性に限定」する趣旨ではないことは明らかである。

     また、控訴人は、原判決の「販売経験を有することが最良であるとされただけであり」
  という指摘を縷々批判しているが、原判決は、
被控訴人馬場が苫小牧支店で行なってい
  た秘書サポート業務につ
  いては、「販売経験が特別に必要であるとは考えられず、ま
  た、販売経験に限らず、広く接客の経験があれば顧客への対応十分に行なえると考えら
  れる」と指摘しているものであって(しかも、その秘書サポート業務が、僅か半年余り
  の地の平成15年春にはOS会社に移行されたことによって、馬場は、接客経験の必要
  も無いリース料の入力業務を担当することとなったことを、原判決は、的確に認定して
  いる。
60頁)、原判決の認定判断は、極めて常識的かつ適切なのである。
     よって、ここでも、控訴人による原判決への批判は、全く不的確であることは明白であ
  り、原判決への「為にする」批判と言わざるを得ない。


    控訴人の原判決批判とその誤り
   さらに、控訴人は、莫大な紙面を費やして、「本件異動が全社的なものであるととも
  に、北海道支店における一連かつ多数の異動のひとつであること」を論じている。(控
  訴理由書22頁ないし59頁)
    しかし、控訴人の主張は、その前提において、失当である。
   すなわち、既に指摘した様に、日産自動車村山工場事件最高裁判決(その前提となっ
  ている東京高裁判決)は、
全労働者を一斉に村山工場内の新型車生産部門へ配置換えを
  させなければならないといった極めて特殊な業務の必要性があったことから、「対象者
  全員についてそれぞれの経験、職歴、技能等を格別に斟酌することなく全員一斉に村山
  工場の新型車生産部門に配置換えすることとしたのは、労働力配置の効率化及び企業経
  営の円滑化等の見地からやむをえない措置として容認しうるとした原判決の判断は正当
  として是認しうる」としたものにすぎず、北海道内の対象者全員についてそれぞれの経
  験、職歴、技能等を格別斟酌することなく全員一斉に道内の特定の営業所に配置換えす
  るというような事情の全くない本件配転命令とは、明らかに、前提事実を異にするもの
  である。

     従って、本件配転命令が、「全社的な事情に基づく大量の人事異動が同時期に行なわ
  れた」という日産自動車村山工場事件との表面的な類似性なるものをいくら強調したと
  ころで、明かに全く事情を異にする日産自動車村山工場事件の東京高裁、最高裁の判決
  の文言が、本件配転命令の場合にも無条件に当てはまるという前提に立った控訴人の主
  張は、全くの的外れであり、著しい誤りである。

     そうすると、そのような著しく誤った理解を前提に、「全社的な事情」や「大量の人
  事異動が同時期に行なわれた」ということの根拠として、「
本件異動が全社的なもので
  あるとともに、北海道支店における一連かつ多数の異動のひとつであること」をことさ
  ら強調したところで、前提を誤ったものであって、主張自体失当であることは明白であ
  る。
    よって、控訴人の主張には、何らの説得力も無いことも自明であると言わざるを得な
  い。


  小括
      以上の様に、控訴人による原判決への批判なるものは、東亜ペイント事件及び日産自動
  車村山工場事件の最高裁判決
(東京高裁判決)についての、控訴人独自の解釈による誤った
  理解、牽強付会の理解を前提に、原判決を論難するものであって、その批判には何ら説
  得力が無いばかりか、単なる「為にする」批判に過ぎない。

    その意味で、原判決にける本件被控訴人の個別事情についての権利の濫用に関する判
  断は、
(後述する「不法な動機、目的」の有無に関する認定を除き、)的確でありかつ正当
  である。


第2 本件配転命令が、被控訴人らの所属する通信労組、及びその組合員である被控訴人を
  対象にした「不当な動機、目的」でなされたものであること(不当労働行為意思の存
  在)


   はじめに

     被控訴人においては、いわゆる「満了型」選択者のうち、本件の被控訴人馬場、阿
  部、森、木内及び石黒ら通信労組組合員を特にリストアップして、配置転換をしたも
  のである。

  しかし、残念なことに、原判決は、この本件は移転命令の本質については、正しい
   理解をしていないものである。
      そこで、本書面において、控訴人会社が、通信労組を嫌悪し、かつ、敵視していた
   こと、及び、被控訴人ら通信労組組合員らを、差別的に扱い、「見せしめ」的配転を
   行なったことを、改めて、明らかにする。


   通信労組に対する不誠実誠実団交という不当労働行為

     「反合理化闘争の一貫」という主張
    控訴人は、控訴理由書において、通信労組は、「今次の構造改革に基づく控訴人の
  一切の施策を否定するとの方針の下に活動を展開している。」(114頁)と評価してお
  り、これは、従前、控訴人が通信労組が本件大リストラに反対していたのは、「反合理
  化闘争の一環」であると主張していたものによる。

   しかしながら、労働組合とは、労働者の雇用・生活の安定、向上をめざすための組織
  であり、組合員の切実な要求を実現するために、団結して闘う組織である。常に労働者
  の要求があって行動するのであって、そのことをもって、「反合理化闘争の一貫」だな
  どと論難されるいわれは全くない。控訴人会社が通信労組に対してこのような評価をし
  ていることこそ、通信労組に対する根深い強烈な嫌悪観、差別意識の証左である。


     大リストラを推進したNTT労組
      ところで、原判決は、本件労働契約に勤務地の限定が合ったか否かについては、消
   極的に解している。この点は、別途、改めて主張するが、少なくとも、通信労組と会
   社との間には、「配置転換協約」(甲
44号証)があり、勤務地を変更する場合の人事
   については、当然、組合との協議が事前にされ、また、本人同意のもとに発令される
   のがこの協約の本旨である。従って、通信労組に対しても従前は、事前に異動に際し
   ては通知され本人の希望をもとに配転がされていた。もっとも、現実には、協議には
   程遠い「通知」の形ではあるなど問題点もあったものの、勤務地を変更する人事異動
   にあたっては、会社は社員に対して「意向把握」を行い、基本的に「希望」に添った
   形で人事発令を行っていた。現に、2000年(平成12年)の「中期事業計画」に
   よる事業所廃止や業務集約に伴う配置転換についても、同様の手順を踏んで人事異動
   が行われていたものである。
      ところが、このような「労使慣行」 をまったく無視して実施されたのが今回の配転
   命令であり、それを可能にしたのが、控訴人会社内の
最大労組であるNTT労組の存
   在であった。
      例えば、NTT労組東日本本部大会(2002年7月11日~12日開催)では、
   支部からの「60歳満了型と退職再雇用選択者との処遇に差異がなければ『苦渋の選
   択』が報われず、今後にも影響が出る」という質問・意見に対し、東日本本部は「具
   体的人員流動は今後も会社責任で人事発令する。理解と納得が得られる決着に向け取
   り組む」と答弁(
NTT労組新聞東日本版2002年7月20日付。後日書証と
   して提出予定。)しており、これは、会社に対し、「60歳満了型」選択者の「報復
   ・みせしめ配転をやれ」とけしかけていると同視できる異常な対応である。

      このように、NTT労組は、本件大リストラを容認しただけではなく、むしろ、会
   社と一体となって、積極的に推進していたと評価しても何ら過言ではなかったのであ
   る。


     控訴人会社による通信労組への嫌悪と敵視
     ところが、本件被控訴人らが所属する通信労組は、控訴人会社の大リストラに対し、
   真正面から反対を唱えていた。従って、控訴人会社から見れば、最大労組であるNT
   T労組が大リストラを容認、推進している一方で、通信労組は、大リストラの障害物
   として捉えられ、従って、控訴人会社は、通信労組を嫌悪し、また、敵視することと
   なったものである。


    不誠実な団体交渉
    そのような中で、NTT東日本における通信労組との団体交渉がなされることとな
   った(なお、通信労組は、その東日本地方本部が対応する中央交渉委員会と、地域別
   に北海道ブロック交渉委員会、東北ブロック交渉委員会及び首都圏ブロック交渉委員
   会があった)。

     ところで、全国的に支店を展開する大企業における労使交渉では、  会社組織にもと
   づく本社との中央交渉レベルと各県別支店との支部交渉が、交渉方式としては一般的
   であるが、控訴人会社は、この方式を頑なに拒み、地域別交渉方式(ブロック交渉委
   員会)となっていた。

     そして、団体交渉の実態は、中央交渉においても地域別交渉でも控訴人会社側の対
   応 は、極めて形式的なものであって、会社の決定した経営方針の事後通知であり、ま
   た、組合からの要求は、これを単に聞き置くという態度に終始していた。控訴人会社
   は、大リストラに基づく「合理化」施策について、通信労組への説明は行なうもの
   の、それは、全ての場合例外なく、既に、NTT労組との合意をもとに確認された内
   容を、事後的に通信労組に報告するというものに過ぎなかった。

       具体的には、本件大リストラ計画発表以前から、
        賃金制度の改定など全社的な社員の労働条件についての変更  や職場の様々な実施
    計画に至る問題などについては、事前に、事細かにNTT労組と協議し、合意を得
    た内容について、その全部ではなく一部、すなわち、通信労組との間で必要最小限
    の説明を要すると思われる事項のみを、通知して来るだけであり、「団体交渉」の
    場で、通信労組側が、度々「この問題はどうなっているのか」の問い合わせを行な
    った場合、初めて、その他の事項の説明に応じる場合が通常であった。

      通信労組は、その時々の労働条件に大きな影響が及ぶ会社施策や春闘時に職場労働
    者の要求にもとづく切実な問題を、「要求書」をもって、会社に具体的な回答を求
    め交渉での解決を要求するという方式をとっていたが、控訴人会社の対応は、「

    別紙』
の会社回答のとおり」という、実に形式的な不誠実極まりない回答書が送付
    されてくるだけであった。

   ③  さらに、団体交渉は、ブロック交渉の場合、控訴人会社は、月に一回、ほぼ2時間
   という一方的なルールを通信労組に押し付け、これに固執する対応に終始していた。

    そして、このような不誠実な団体交渉実態は、労働者の労働条  件にかつてないほ
   どの重大な影響を与える本件大リストラに基づく「構造改革に向けた施策」について
   の交渉経緯(後日、書証として提出予定。)においても、全く同様の対応であった。

    2000年4月の中央交渉で、控訴人会社から、「構造改革へ向けた施策」の提案
   があって以降、北海道ブロック交渉では、労働条件の重大な不利益変更をもたらす問
   題であることから、これを十分に論議し、基本的に会社提案の撤回を求める立場か
   ら、通信労組として、大リストラの問題点を指摘する「要求書」を繰り返し提出して
   いた。特に、51歳以上の労働者にとって死活問題である大幅な賃金カットが内容の
   柱となっており、会社提案の理不尽さにさまざまな角度からその不当性を追及する指
   摘を行い、提案の具体的な説明と資料の提出を求める交渉が繰り返し行われた。

         しかしながら、控訴人会社の対応は、組合要求書に対する回答書や(甲17号証、同
    20
号証、同23号証)交渉記録からも明らかなように、基本的な労働条件に関わる重大
   な要求や指摘について、すべて「会社の業務運営上の問題」として扱い、「会社の責
   任において実施しているところであります」等と版で押したような回答に終始する異
   常なものであった。

    このような交渉姿勢が、不誠実団交に当たることは明らかであって、会社は、明ら
   かに、通信労組を嫌悪し、かつ、敵視していたものである。



   被控訴人ら組合員への差別的な「見せしめ」配転

    「満了型」選択者への「見せしめ」配転
       被控訴人においては、いわゆる「満了型」選択者のうち、本件の被控訴人馬場、阿
   部、森、木内及び石黒だけではなく、本件と同内容の東京訴訟の原告である鎌倉清美
   及び同佐藤清、さらに、配置転換がなかったために本件訴訟の原告とならなかった神
   千鶴子、吉田一夫、菅原健並びに本件リストラによる精神的肉体的負荷によって「過
   労死」をした故奥村喜勝を含む通信労組組合員を特にリストアップして、配置転換を
   したものである。

    「業務上の必要性」の無い本件配転命令
        本件での配置転換、すなわち、遠隔地配転を含む異職種への配置換えについて、控訴
  人会社は、その基本的な考え方として①首都圏を中心とした市場性・収益性などの高い
  エリアへの重点配置、②新サービス等の展開・拡大に向けた配置、③人材育成に向けた
  配置など、業務の必要性にもとづき実施したものである旨主張している。
     しかし、実際に実施された配置転換は、北海道の異動状況に見られるように「業務の
  必要性」とは裏腹の恣意的な「見せしめ」異動を行ったことを示している。
     別紙1「図表」(訴状末尾に添付したもの。なお、念のため、本書面の末尾にも添付
  する。)に示すように、道内配転では札幌・小樽から函館、室蘭、苫小牧、旭川、釧
  路、帯広、北見へ配転させ、旭川から札幌、帯広へ、釧路・帯広・苫小牧から札幌へ配
  転するなど、「玉突き、たらいまわし」と評価せざるを得ない配置転換がなされてお
  り、原判決が正当に認定した様に、本件被控訴人に関わる配転は、いずれも、「業務上
  の必要性」がないものであった。
   具体的に指摘すると、被控訴人石黒の場合、2001年(平成13年)の1月、担当
  業務が札幌に集約されたため、苫小牧から札幌へ2時間かけての通勤を余儀なくされて
  いた。ところが、控訴人会社は、本件の配転命令において、石黒を東京へ配転し、他方
  で、苫小牧からH・K氏を札幌へ配転、札幌から、通信労組組合員である被控訴人馬場
  とNTT労組のH・O氏を苫小牧へ配転した。なお、馬場は、業務集約により、滝川の
  事業所廃止で札幌に転勤させられていたものが、苫小牧への転勤となったものである。
  このような「玉突き、たらいまわし」的な配転の全体像を見ると、本件配転命令は、所
  属組合に関係なく満了方選択者に対して配転命令がなされている外形があるものの、そ
  の実態に着目すれば、控訴人会社における被控訴人ら通信労組組合員を狙った露骨な意
  図、すなわち、本件大リストラに反対していた通信労組組合員を嫌悪し、恣意的な「見
  せしめ」的意図による配転であったことが容易に看取されるのである。


    被控訴人ら通信労組組合員に対する配転命令に看取される控訴人会社の不当労働行為
  意思
     道内配転の全体の不合理性
    控訴人会社において、再配置を必要と判断した41人について、氏名、年齢、所属労
  組、元々の職種、選択時の職種、配転後の職種等をまとめた一覧表が原審で提出済の甲
  252号証である。

   ア この一覧から理解されることは、まず、最終的に道内で再配置が必要と判断した2
   4人について見ると、控訴人会社は、例外の4人を除き、全員について拠点をまたが
   る異動をさせていることである。その例外の4人とは、石川登美(13番)、吉田一
   夫(27番)、神千鶴子(31番)、国田洋治(33番)であるが、吉田一夫は当時
   の通信労組北海道支部の執行委員長、神は当時の通信労組北海道支部の執行委員であ
   り、仮に、控訴人会社がこの2人も拠点をまたがる配転した場合、通信労組の活動に
   大きな支障をもたらすことは明らかであり、かつ、通信労組がこの2人の配転につい
   て、不当労働行為であると非難することが確実であることから、控訴人会社は、かか
   る事態を回避するために、この
2人については例外的な扱いをしたものと思われる。
   また、石川登美は、元々、札幌で長年勤務していたものであるが、本件配転命令以前
   の2000年に、本人の希望に反して、既に旭川に配転されていたところ、本件配転
   においては、札幌への異動を強く希望していたにも関わらず、あえて、旭川に残した
   というものである。

   イ この事実は、結論から述べると、満了型を選択した全員を配  転することそれ自体
   が目的であったと言わざるを得ない。

        例えば、苫小牧支店について見ると、奥晴夫(1番)がSEとして、被控訴人馬場
   笑美子(2番)がサポート業務として配転されたが、SEが必要であれば、元々、苫
   小牧にいた工藤博厚(29番)を配置すれば足りたはずであるし、サポート担当が必
   要であれば、元々、苫小牧で勤務し、当時札幌で勤務していた被控訴人石黒(35
   番)を配置すれば足りたはずであり、かかる配転の方が明らかに合理的である。

      また、帯広支店について見ると、森田実(7番)が札幌から、庄司正明(8番)が
   旭川から、それぞれ配転され、営業総括の仕事についている。この異動で、この時
   に、滝山修(23番)が帯広から札幌に配転されているが、滝山を異動させることな
   く、森田が担当した仕事を滝山に担当させることは十分可能であり、かかる配転の方
   が明らかに合理的である。

       釧路支店について見ると、被控訴人木内務(9番)と井部秀明(10番)が配転さ
   れ、営業総括の仕事に就いている。この時に、工藤光広(19番)が釧路から札幌に
   配転されて営業総括の仕事に就いているが、工藤を札幌に異動させずに、札幌で勤務
   していた木内や井部が釧路支店で担当した仕事を、釧路に勤務していた工藤に担当さ
   せることも十分可能であり、かかる配転の方が明らかに合理的である。
    北見支店について見ると、川分義一(11番)と鳥居和弘(12番)が札幌から配
   転され、SEとAMの仕事についている。この時に、北見に勤務していた佐藤幸喜
  (37番)が東京に配転され、AMの仕事についているが、佐藤を東京に異動させない
   で、川分及び鳥居が北見で担当した仕事を佐藤に担当させることも十分可能であり、
   かかる配転の方が明らかに合理的である。

   また、旭川支店関係では、旭川から札幌に川村洋子(32番)を配転する一方で、札
   幌から旭川に長距離通勤をしていた石川登美(13番)を札幌に配転することな
   く、旭川に残している。両人とも元々はオペレーター業務を担当しており、札幌に川
   村を配転するのであれば、石川を札幌に配転した方が明らかに合理的である。

    さらに、札幌について見ると、札幌から地方に10人が配転されている。この10
   人の配転先での職務は、SEが2人、AMが1人、サポート業務が3人、営業総括業
   務が4人である。一方、地方から札幌に8人が配転されているが、この8人の配転先
   での職務は、SEが1人、AMが1人、営業総括業務が6人である。札幌から地方へ
   10人を配転する一方で、地方から札幌に8人も受け入れることは極めて不自然不合
   理であると言わざるを得ない。

   ウ このように、拠点間を越える配転の大半が、一見して不自然・不合理な配転であ
   り、しかも、例外事情が認められない者を全員を配転しているということは、配転す
   ること自体が目的であったといわざるを得ない。

    スキルのミスマッチという不合理性
  ア 控訴人会社は、本件構造改革によって、控訴人会社には、業務としては、高度なス
   キルが要求される法人営業しか残されていない旨を繰り返し主張していた。

    しかしながら、被控訴人らにかかる高度なスキルがないことは、奥証人の証言及び
   陳述書(甲
128号証)から明らかである。その上、札幌を除く道内の支店・営業所にお
   いては、そのような高度のスキルを要する法人営業の仕事が元々少ないのであって、
   殊更、高度のスキルの無い被控訴人らを配転する必要性や合理性は全く認められるも
  のではない。

  イ 高度のスキルとはかけ離れた勤務の実態
      被控訴人らをはじめとした満了型の従業員については、配転先においては、被控訴
   人が再三主張して来た様に、例えば、
被控訴人らの配転先での業務は、ダイレクトメ
   ールの封筒づくり、そのポスティング、終日インターネットブラウジングなどのパソ
   コン作業、土地カンもなく業務スキルを無視しての営業活動、物品の受払いなどで、
   およそ控訴人会社が、雇用選択前に繰り返し主張していたところの「NTTに残れば
   高度な業務に就かせる」とはほど遠い実態に置かれており、例えば、
釧路支店に配転
   された木内に典型的に見られる様に、ⅰ、本来であれば、OS会社でやる仕事を担当
   した、ⅱ、所定労働時間が必要な程度の量の仕事が無い、ⅲ、控訴人らが配転される
   以前は、アルバイト等がやっていた仕事を担当した、というものであって、配転先で
   は、仕事らしい仕事が与えられておらず余剰人員扱い、というのが実情である。

  配転自体が自己目的
        このように、本件構造改革に基づき北海道で行われた配転は、配転すること自体が目
  的であったといわざるを得ず、配転の必要性が無いことは明らかである。

        従って、配転の目的は、実は、他にあったと言うべきであって、それは、正に、構造
  改革に反対して満了型を選択したことに対する
見せしめであり、さらに、構造改革へ反
  対した被控訴人ら通信労組組合員に対する、露骨な差別的不利益取り扱いという不当労
  働行為意思に他ならないものである。


   差別的取り扱いという不当労働行為意思の存在
     以上から明らかな様に、このような本件被控訴人らに対する扱いは、明らかに、控訴
  人会社が進めた大リストラに反対する者、すなわち、通信労組組合員に対し、見せしめ
  の意図を持って行なわれたものであって、明白な不当労働行為意思(差別的取り扱い)
  に該当するものである。


   「不当な動機、目的」の存在
     よって、本件においては、先に見た原判決の判断枠組み(東亜ペイント事件最高裁決
  の枠組み)に照らしても、「
不当な動機、目的をもってなされた」ことは明らかであ
  る。
    そうすると、控訴人による被控訴人らに対する本件配転命令は、権利の濫用であっ
  て、されないものであることも明らかである。


                                                                以上

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