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平成19年(ウ)第777号 控訴人ら(及びその家族ら)の奪われた権利、そして、現職とし て被控訴人において働いている控訴人ら(飯野和子、金子恵美子、 佐藤清、志賀正男、笹原武)の現に侵害され続けている人権は回復 されなければならない。本件で正しい裁判がされることは、9人の 控訴人の人権及び家族らの人権にとって極めて重大なものであり、 また、それはこの国の労働のルール、「法の支配」(法治主義)に とっても重要である。 世界でもトップの巨大通信企業であり、日本の主要企業でもつね に上位にあるNTTが、本件のようなやり方で、51歳以上の労働 者の賃金を3割〜1割5分切り下げて、基幹業務をマル投げし、 100%株式を有するOS会社に移転させることができるとなれば、 この国の大企業は我れ先にと同じ手法をとるであろう。そして、そ うしたやり方に同意しなかった者を、「全国転勤型」とみなして、 本件のような不利益処遇をすることが許されるとなれば、これまた 同じ手法が横行するであろう。 そんなことが裁判所で認められれば、その結果なにが起きるかは 明らかである。 (@)65歳定年を定めた高齢者雇用安定法は空洞化し、事実上の 50歳定年制が広がる。 (A)会社法(企業分割法制)と労働契約承継法が労働者保護のた めに明記した、対象労働者の労働条件の不利益変更の規定は NTT型「カラクリ」によって事実上空文になる。 (B)長い間に形成された整理解雇の四要件や就業規則の不利益変 更禁止、さらには、少なくとも一方的な不利益配転に歯止め をもうけた配転法理などの判例ルールは潜脱される。 (C)育児・介護休業法もまた実効のないものになる。 そして、さらに、大きなルールの破壊が生ずる。それは、憲法と 諸法と信義則に基づく法治主義の大原則、法治国家・法治社会が崩 壊するということである。大企業らに利益を追求する「自由」はあ っても、そこに働く労働者が人間らしく生き、働くことを侵害する ような場合には、その「自由」は制約されるというのが法治主義の 基本である。さらに言えば、大企業らの利益至上の一方的な労働の ルール破壊が行われたときに、被害を受けた者が裁判所に訴えでれ ば、裁判所は歯止めをかけてくれる。労働者は「まだ裁判所があ る」と期待することができる−それが今日のこの国の法治主義であ る。 そのために、本件訴訟が手続において公正に、具体的には控訴人 ら申請の証人を採用し、取調べて審理を尽くすことを求めるもので ある。 B証人採用に反対する被控訴人らの意見 被控訴人らは、当日の裁判において申立人らの前述の5名の証人申 請について、すべて不必要であるとして、却下をもとめた。 被控訴人らの寺前代理人は、渡辺洋一郎、村上隆久、新健治の3名 については、被控訴人らの7月9日付意見書(甲2)にもとづいて、 鬼山敏雄、岩崎俊両名については、10月30日付意見書(甲7)に もとづいて、いずれも却下を求める意見を述べた。 Cこれに対する申立人らの反論 被控訴人らの意見に対して、申立人らは、ただちに反論した。申立 人らを代理して、坂本代理人が概要以下のとおり述べた。 (ア)渡辺洋一郎他2名の採用反対に対する反論 被控訴人らの意見は、一言でいえば、本件争点と無関係な事実 についての証言趣旨だからということである。箇条書で要約すれ ば、(@)尋問事項は、「3人固有の事情であり、3人は本件当事 者ではないから、本件とはいかなる意味でも関係がない」、(A) 「『雇用形態選択』制度の合理性、運用の適法性、あるいはその 過程に瑕疵が存したかどうかは本件とは関係ない」、(B)「雇用 形態選択」についての人事担当者の説明については、控訴人らと 同じ職場にいた者ではない(のだから無関係であり、取り調べて もなにも立証できない)というのが被控訴人らの反対意見の要点 である。 被控訴人らの反対意見は、全くのすり替えであり、道理に反す る暴論である。 渡辺他2名の証人をもって控訴人らが立証しようとする直接の 事実は、以下のとおりである。 (@)「雇用形態選択」制度が、その対象とされ、これに応じた 者にとって、著しく不利益なものであったこと、 (A)にもかかわらず応じたのは、応じない場合に「満了型」と みなされるということが耐え難い不利益であったからである ということ、 (B)移籍に応ずることは、さしたる不利益ではなかったとか、 応じたのは、応じた者の自由な選択だったとか言う主張が事 実に反すること、 (C)著しい不利益に応じさせるには、「満了型」の不利益を強 調し、さらに、それが実際にどれほど苛酷な不利益になるの かを、全従業員に知らしめるために本件配転が強行され、無 期限に維持されていること この相関連する一連の事実こそ原審以来の控訴人らの一貫した 主張であり、被控訴人らが全面的に否定する事実である。3名の 証人は、これらの事実を立証するための証人なのである。 当然のことながら、控訴人らのこの主張の当否は本件での原審 及び当審での重要な争点である。この争点について、公正な判断 をする上で、前提として不可欠なことは、(@)及び(A)の事実の 有無である。(@)及び(A)の事実がなかったら、その余の(B) (C)(D)もまたないことになるからである。 上記(@)及び(A)の事実は、誰から見ても常識であると控訴人 らは考えた。おそらく、直接に「雇用形態選択」を要求された全 労働者はもとより、当時のマスコミをも含めて誰もが、そのこと を知り、認める事実である。そうであっても、もちろん、控訴人 らは、原審において、証人岩崎俊及び原告らの本人尋問等で、そ のことを証明した。率直に言えば、それをもって社会通念上、必 要な水準での立証はしたと考えたのである。だから、直接の体験 者である移籍に応じた者からの証人申請はしていなかった。 ところが原判決は、「退職再雇用型の労働条件は合理的であ る」、「選択は自由意思に委ねられていた」とし、被控訴人らの 主張をマル呑みしてしまった。 控訴人らは、原判決のこの事実誤認を当審で追及している。そ して、こうした主張を証明するために、初めて当審で、移籍選択 を直接体験した渡辺他2名の証人申請をしたのである。 控訴人らの立証趣旨に照らせば、個々の控訴人の働いていた職 場にいた移籍者でなければ証人適格がないというのは、そもそも ナンセンスである。被控訴人らに限っても、移籍に応じた(応じ させられた)者は、約2万6000名(NTT西日本では約2万 9000名、合計約5万5000名)にのぼる。51歳以上で、 移籍に応ずることを求められ、これに応じた者の多くの事情には 共通性がある。もちろん、みなし満了型で受ける不利益の程度、 家族や本人の健康状況などについては、人様々に違いはあろう。 しかし、51歳以上の対象者についての退職再雇用(移籍)の処 遇は共通である。どの職場によって、どう違うというものではな かった。3人の証人は、この制度の不利益を身をもって証言でき る、言うならば貴重な「サンプル」に外ならない。 「雇用形態選択」制度の内容・手法の当否が、本件配転の適法 違法の重要な判断要素であることは、原判決でさえ認めている。 「雇用形態選択」による不利益の有無、その程度が同制度の当 否を判断する上で、重要な要素であることはいうまでもない。 しかしながら、原判決は、「退職再雇用」を「選択」すること による不利益を軽視し、「選択者」の多くが、応じなければ満了 型とみなされることの不利益がどんなに大きいと感じていたか、 そのことが「選択」にどんな重圧を加えるものになっていたかに ついては、被控訴人らの主張をマル呑みして、控訴人らの主張を 退けた。 そして、原審では、被控訴人側の土井証人は、不利益性を否定 する証言をしている。しかし、被控訴人らも、原審で直接、移籍 者によって、不利益なものではなかったとか、満了型とみなされ るということが、移籍に応ずる動機になってはいなかったという 立証はしていない。直接の証人による立証は双方になかったので ある。 以上の経過のもとで、控訴人らが、当審で今回、その重要な主 張を立証するために、渡辺他2名の証人申請をしたのは当然であ る。被控訴人らの反論は、たんに誤っているにとどまらず、結局 は、重要な事実について、控訴人らの立証の権利を阻害しようと するもので、控訴人らの裁判を受ける権利を侵害する不公正な主 張であり、とうてい認めるわけにはいかない。 (イ)岩崎俊の採用反対に対する反論 岩崎俊の証人を今回改めて申請するのは、被控訴人らがNTT 労組津田委員長(当時)の「あいさつ」を引用して、その主張を 裏付けようとしているからである。当審で、岩崎証人を尋問する 必要性は高い。 (ウ)鬼山敏雄の採用反対についての反論 鬼山証人の採用に反対する被控訴人らの意見は、結局は被控 訴人らが計画し、実行したリストラ合理化計画、その中核である 「雇用形態選択」制度とその実行のために、一体不可分の関係に ある「みなし満了型」の設定の必要性、合理性について、控訴人 らの反対立証(とくに証人による反証)を認めないというもので ある。このような主張は、企業(とりわけ大企業)が組織的、計 画的に立案し、実行したリストラ・合理化計画について、その結 果、不利益を受けた労働者側が反証する権利を奪うもので、公正 な裁判の構造的破壊にいたるものである。 被控訴人らが鬼山敏雄の証人調べに反対する理由の中心は、鬼 山の立証趣旨のほとんどが、被控訴人及びNTTグループの財務状 況等については知らない(知り得る立場、経験、能力がないとい う趣旨)事柄なのだから、証人として調べる必要がないというこ とにある。 しかし、このような主張は、道理にも事実にも反する。それだ けではなく、「強者の奢り」に骨まで浸り、弱者側の公正な裁判 を受ける権利を否定する不公正な主張に外ならない。 被控訴人らの「構造改革」リストラ、そしてその中核である 「雇用形態選択」制度とみなし満了型設定、そして、そのための 基幹業務マル投げのOS会社制度などの目的と内容について、その 立案、実行にあたった中枢の人物を、控訴人らは証人に申請する ことは実際には不可能である。事前に会って、彼らが何を知って いるかをチェックすることも決して出来ない。 仮に控訴人らが依頼したとしても、こうした「事情に明るい人 物」は、被控訴人の財務・労務の中枢にいて、控訴人らの依頼を 受諾する訳がない。もし、真実を自由に証言するならば、控訴人 らの主張を裏付けてくれるであろう「人証」はすべて、巨大な NTTと被控訴人らの機構の中にあって、控訴人らには手に触れる ことさえできないのである。 このことは、大企業のルール違反の是正を求める裁判、たとえ ば、解雇、差別、過労死、公害の諸事件に共通することである。 それは、社会常識であり、「裁判上顕著な事実」だと断言でき る。それが現実であることを被控訴人は十分に承知しているとこ ろである。 被控訴人らは、リストラ合理化を実行した中枢職制らを証人に 申請し、充分に打ち合わせた上で(実際には被控訴人側の主張に 合致するように仕上げて)長文の陳述書にまとめて、乙号証とし て提出し、これにもとづいて主尋問ができる。控訴人らが、こう した証人に反対尋問で、主尋問と異なる真実の証言をさせること は「至難の業」である。 さらに言えば、被控訴人らの提出する書証は、当初から構造改 革を善とし、その正当性、合理性、必要性を企業の内外に明らか にするためにつくられたものであって、仮に控訴人らの主張する ような脱法的で、反社会的な目的があっても、そんなことを文書 にしておくことはあり得ない。 鬼山敏雄証人の採用は、単に証拠採用の合理性、必要性にとどまらず、公平、 公正な裁判を受ける権利に直結する問題である。鬼山敏雄の証人採用をつよく 求める。 (4)宮崎裁判長ほか2名が下した結論−証人申請をすべて却下 両者の意見陳述書の後、宮崎裁判長は、合議のため休廷を宣言し、3人の裁判官は、 別室で20数分にわたる合議を行った。 その後再入廷した宮崎裁判長は要旨以下のとおり述べて、申立人らが請求した5名の 証人すべてについて、採用しない旨の決定を行った。 @渡辺、新、村上各証人について 本件と直接の関係はなく、控訴人(申立人)らとしてもすでに主張立証しているとこ ろである。また、職制の威迫があったかどうかは記録にある。よって、これら3名は証 人として採用しない。 A鬼山証人について 従前から双方が主張立証している点に関する証人である。主張を尽くしているし、書 証も提出されている。この点については、記録から総合的に判断したい。従前の主張を カバーするという趣旨と思われるが、証拠としてはすでに出ているもので足りると考え る。よって、採用しない。 B岩崎証人について 岩崎証人については、原審ですでに2回にわけて尋問している。当審としては、やは り採用しない。 (5)坂本代理人からの異議とこれに対する裁判 5名の証人のすべてを採用しないとの決定に対し、坂本代理人は、概要以下のとおり、 異議を述べた。 @渡辺、新、村上各証人について 退職再雇用に応じた社員の証言は今まで出ていない。 重要な論点であり、この点の立証を尽くさないのであれば、控訴人らの裁判を受け る権利の侵害といえる。 3人が多いというのであれば、このうちの誰かに絞ることも考える。審理の遅延に はならない。 A鬼山証人について 記録にあるというが、「法人格が違う」という点については、地裁判決が明確に打 ち出した点である。それまで一度の釈明もなく、「法人格が違う」というだけでは割 り切れない問題があることについては、これまで、意識的な立証がなされてこなかっ た。 控訴審における重要論点であり、すでに述べたように、本件のような大企業の計画 ・立案したリストラ合理化施策の狙いと内容について真実を明らかにするうえで、控 訴人らとって、鬼山証人は、唯一の証人である。これさえ拒否することは、控訴人ら の裁判を受ける権利の侵害になる。 B岩崎証人について 今回、岩崎証人を申請したのは、控訴審になって、被控訴人がNTT労組委員長の言 動を持ち出したからである。 これに対する反証の機会を与えてほしいという趣旨であり、現段階で同証人を取り 調べる必要性は高い。 C これらの証人を取り調べるのは、一期日あれば足りる。訴訟の遅延にならないよう 控訴人らとしても最大限努力する。 これらの証人を採用しないという決定に異議を述べる。この異議さえ認められず、 そのままの決定ということならば、裁判の公正の問題になると考えるので、この異議 について慎重に判断してほしい。 この異議に対し、宮崎裁判長ほか2名は、裁判官席で簡単な合議を行った。その結 果、宮崎裁判長は、「さきほどの合議のとおり、証人はいずれも採用しない、異議は 却下する」と述べた。 (6)忌避申立 5名の証人のすべてが不採用とされ、それに対する異議も退けられた。このような事 態は、もはや公正な裁判とはいえなかった。 申立人らは、やむを得ず、3名の裁判官に対する忌避を申し立てることとした。 申立人らを代理して坂本代理人は、「大変遺憾ですが、このような状況では、申立人 らの公正な裁判を受ける権利が侵害されていると考えざるをえません。裁判官3名に対 する忌避を申し立てます。忌避の詳しい理由は3日以内に書面で提出します。」と述べ 、本件忌避申立に及んだものである。 4 裁判の公正を妨げるべき事情の存在 (1)渡辺・村上・新の各証人の不採用 本件は、通常一般の配転事件ではない。本件は、約3万人にも上る51歳以上の社員を 新設子会社に移籍させることを中核とする大規模「構造改革リストラ」の中で、移籍を拒 否したことの故に会社が配転による不利益を課した事件である。本件各配転がいかなる目 的でなされたのかを解明するためには、「雇用形態選択」制度の中で、それがどういう機 能を果たしたかを明らかにすることが必要不可欠である。 一審判決は、「雇用形態選択」制度の内容・手法に不当な点はないから、本件各配転の 目的にも不当な点はないと結論づけた。したがって、雇用形態選択制度の内容・手法・運 用等の実態に踏み込んだ立証が控訴審ではどうしても必要であった。このため、申立人ら は 、「雇用形態選択」においてやむにやまれず子会社への移籍(退職再雇用)を選択し た社員である渡辺・村上・新の各証人を申請した。 「雇用形態選択」制度において、51歳以上の対象者にとって異職種広域配転がどういう 意味をもつのか、移籍拒否の場合にそうした配転をされるコース(「満了型」と名付けら れている)を選択したものとみなされるということが「選択」にどのような影響をあたえ るのか、自由な意思で移籍を「選択」するなどということがありうるのか、これらの点は 、実際、その「選択」の場に立たされて、移籍を「選択」せざるを得なかった者でなけれ ば語ることはできない。 「雇用形態選択」制度における「選択」が社員の自由な意思に委ねられていたなどという 事実が存在しないことは、「選択」を強いられた当人によってはじめて直接に明らかにし うるのである。 一審判決は、選択が自由意思でなされたことを「雇用形態選択」制度の内容等の相当性判 断の根拠としていた。これが事実誤認であることを明らかにするためには、これら3名の 証人尋問が必要不可欠なのである。しかも、一審では、申立人ら被控訴人らのいずれから も、退職再雇用者のなかからは一人も証人が出されていない。三人の証人は、「初めての 直接証人」だったのである。 これに対し、宮崎裁判長は、これらの証人は本件と直接関係ない、申立人らはすでに主張 立証している、職制の威迫の有無についてはすでに記録にある、などと述べて、これら3 名の証人申請を却下した。 しかし、これらの証人の体験を本件とは直接関係ないとして聞く耳をもたない態度をとる ことは、裁判所としておよそ公正を欠くものである。 申立人らは、まさに、一審判決が問題にした「雇用形態選択」制度の内容・手法の当不当 、移籍を「選択」した者にとってその「選択」は自由意思に基づくものだったのか否か、 この点に関して、移籍「選択」を直接体験した証人らによって立証しようとしたのである 。この点は、「雇用形態選択」において移籍を拒否したために受けた本件配転の効力を判 断するうえで、きわめて重要なはずである。 また、確かに申立人らは、これまで、自身の体験等に基づき「雇用形態選択」制度の内容 ・手法の問題点等について供述し、あるいは証拠提出をしたことはある。しかしながら、 直接移籍を体験した者の証言は、すでに述べたとおり、これまで一つも出ていない。すで に記録にあるから聞かなくてよいなどという理屈は通らない。 さらに、同裁判長は、職制の威迫の有無については記録にあるというが、申立人らの立証 趣旨は、威迫の有無に限るものではない。申立人らは、これらの証人によって、一審判決 のいう「雇用形態選択」制度の内容・手法の当不当の問題と移籍選択が自由意思だったの かどうかの点を明らかにするとともに、移籍による不利益は大きくないとの被控訴人らの 主張が事実に反するものであることを、直接の体験者によって明らかにすることを求めた のである。 申立人らは、この点に関する証人が3名では多いというのであれば、誰かに絞ることもあ りうる旨を申し出た。 それでも、同裁判長は、わずか1名でさえ採用しないという結論を変えようともしなかっ た。 控訴審での最重要争点に関する証人であり、訴訟遅延にならないにもかかわらず、ひた すら被控訴人らの意見に同調して証人採用を拒否する姿勢は、単なる訴訟指揮の当否の問 題を超えて、誰の目から見ても控訴棄却の予断をもって審理を急いでいるものとしか考え られない。少なくとも、裁判の公正を疑わしめるものであることが明らかである。 (2)鬼山証人の不採用 一審判決は、被控訴人らが行った「雇用形態選択」制度を含む「構造改革」に必要性・ 合理性があったという判断をもとに、「担当職務のなくなった者」に対する配転の有効性 についての判断基準は緩やかでよいとして、本件各配転の業務上の必要性をすべて認めた 。 また、同判決は、「構造改革」の必要性・合理性を判断するにあたり、NTTグループ全 体の経営状況が安定していても、被控訴人らはグループ全体とは法的に別人格であるから 関係ない旨を述べていた。 控訴審において、申立人らは、NTTグループの特殊な一体性、同グループの経営状態が 世界的に見ても超優良であること、被控訴人ら自身の経営悪化の不存在等について新たな 事実主張を行い、被控訴人らはこれらの主張を全面的に争った。これらの点もまた、まさ に控訴審での最重要争点であった。 鬼山証人はこの点に関する証人であった。しかも、申立人らにおいて、一審判決が本件 各配転の有効性判断の大きな根拠とした「構造改革の必要性・合理性」に関する事実認定 が誤りであることを明らかにする証言を求めることができる唯一の証人であった。 宮崎裁判長は、この点について、従前から双方で主張立証している、書証もある、記録 から総合的に判断できる、などとして鬼山証人を不採用とした。 しかしながら、NTTグループの特殊な一体性や被控訴人自身の経営悪化の予想が事実に 反することは、一審判決が「法人格が違うから関係ない」との判断を示したこともあって 、控訴審で、新たに改めて重要争点として浮上したものである。 被控訴人らは、この点に関する立証手段を膨大に有しており、それらの中から都合のよ いもののみ選別して提出することが可能な立場にある。しかしながら、申立人らが、会社 の経営財務状況について書証で立証するには限界がある。鬼山証人は、労働組合活動の一 環として、被控訴人ら及びNTTグループの経営分析を行ってきた者であって、申立人らに とっては、この点に関する最適かつ唯一の証人になりうる人物であった。 鬼山証人についても、申立人らは、尋問時間を30分に短縮する用意があるとまで述べ た。それでも同裁判長は、採用しなかった。ひたすら被控訴人らの意見に同調し、新証拠 の採用を拒絶して、従前の記録に固執する姿は、本件「構造改革」とその中核である「雇 用形態選択」制度は本件各配転の効力についての判断と無関係であるとする予断、あるい は、それは当然に「善」であるとする強固な予断をもって審理に臨んでいるものとしか考 えられない。 (3)岩崎証人の不採用 被控訴人らは、控訴審において、「雇用形態選択」制度を採用したことの正当性や手続 きの公正・適切性を主張するにさいして、その一つの根拠としてNTT労組津田委員長の挨 拶を引用した。 それ以外にも、いくつもの箇所でNTT労組との合意を強調して主張している。また、それ との対比で申立人らが所属する通信労組の対応を控訴審でも繰り返し非難している。 したがって、本件「構造改革」に対するNTT労組員を含む社員の反応はどのようなものだ ったのか、NTT労組委員長の挨拶は社員全体の意識を正しく反映するものなのかどうか、 通信労組と被控訴人との交渉はどのようなものだったのか、通信労組に非難されるような 対応があったのかどうかは、被控訴人らの新主張に照らしても、控訴審での重要争点であ ることが明らかである。 一審判決も、NTT労組との合意を「雇用形態選択」制度の内容・手法の相当性と結びつ けて判断していた。このことからも、この点が控訴審の重要争点であることはいうまでも ない。 岩崎証人は、この点に関する証人であり、このことを的確にかつ短時間で証言する最適 の証人であった。 しかしながら、宮崎裁判長は、同証人について、すでに原審で2回にわたって証言して いるとして、採用しなかった。2回というのは、主尋問と反対尋問をそれぞれ別に行った というに過ぎず、特別に複数回行ったわけではない。にもかかわらず、同裁判長は、この 2回という回数にこだわった。 また、被控訴人の控訴審における新たな主張に対応する証言であるにもかかわらず、従前 証言したとの一事をもって却下した。極めて不当な決定であった。 申立人らは、主尋問時間を20分に短縮する用意があると申し出たが、それでも採用され なかった。 このような態度は、申立人側の立証はもう見たくない、証言は聞きたくないというものに しか映らないのは、当然である。 同裁判長は、控訴棄却の予断のもとに審理を急いで終わらせようとしているものとしか考 えられないのである。 (4)5名全員不採用の事実が物語る「裁判の公正を妨げるべき事情」 申立人らにとって、上記の5名の証人は、一審判決を覆し、自らの生活と権利を守る正 義の判決を獲得するために重要かつ不可欠なものであった。 これらの証人は、すべて、一審判決の判断や控訴審でも双方が激しく争っている論点に 関する証人ばかりであり、これまでの記録には全く盛り込まれていない事項に関する証言 がなされるはずであった。 これらについて、すでに記録にあるとかすでに一度証言したなどという理由で採用しな い結論に固執する裁判長の姿は、誰の目から見ても、被控訴人側の社会通念に反する主張 にひたすら同調するものにしか映らない。 審理を尽くさずに、控訴棄却の予断をもって、審理を急ごうとするものとしか考えられな いのである。 申立人らは、証言の時間を短縮するとか証人の人数を絞るなど訴訟遅延にならないこと努 力をすることを申し出た。一期日で終わらせることも提案した。 控訴審ではまだ2回の口頭弁論しか行われていない。双方から、形式的なものを除いて 合計12通(申立人側5通、被控訴人側7通)もの準備書面が提出され、審理はまだ判決 するに熟していない。 なぜ、わずか一期日の証拠調べができないのか、なぜ、審理を尽くそうとしないのか、 その合理的理由を見出すことは不可能である。 申立人側の5名の証人申請を何が何でも却下し、ただの一人も採用しないという結論に 固執する宮崎裁判長及びこれと合議をして決定した山本裁判官、今泉裁判官の姿は、でき るだけ申立人側の証拠は見ないで、急いで控訴を棄却しようとするものとしか考えられな い。 宮崎裁判長ほか2名の裁判官に、裁判の公正を妨げるべき事情があるのは明らかである 。 (5)公正な裁判を受ける権利が侵害されている 申立人らには、憲法で定められた公正な裁判を受ける権利がある。 一審で全面的に敗訴した申立人らには、審理を徒に遅延させることとなるものでない 限り、一審判決の事実認定及び被控訴人側の主張(とりわけ控訴審での主張)を十分に 争う権利が保障されなければならない。 申立人らは、巨大企業である被控訴人らの従業員であり、被控訴人らを相手にその労 務施策の妥当性を争う訴訟の当事者としては、証拠の収集に一定の限界がある。控訴審 としては、こうした事情に即して、立証において公平な機会を保障する対応をすること こそが、公平な裁判所としての責務である。 国民は、公平な裁判所による公正な審理を受ける権利を保障されている。控訴裁判所 として、一審で全面敗訴した申立人らの申請証人、しかも、双方が控訴審でも激しく争 っている重要な論点に関する証人を、まだ2回しか期日を開いていないのに、ただの一 人も採用しないというのは、申立人らはもちろんのこと、一般人の目からみても、不公 正かつ不公平である。 訴訟指揮に対する不服は、忌避事由にはあたらないと言われている。しかしながら、 極端に偏頗な訴訟指揮は、忌避事由にあたると解されているし、そもそも、忌避は、当 事者や市民に対して裁判の公正さとその外観を確保するための制度であるから、その判 断基準が一般市民から離れたものであっては、制度の存在意義自体が失われる(「注解 民事訴訟法【1】(青林書店・2002年10月初版)」229頁)。訴訟指揮に関す る事項だからといって、それだけですべて忌避事由から排除するのではなく、その徴表 としての意味に常に留意すべきである(同232頁)。 司法制度改革が進み、市民の司法参加が言われる今、忌避事由の判断は、一般市民の 目線で行われるべきであって、訴訟利用者の信頼を維持する観点から公正に行われるべ きである。 申立人らの意見に一切耳を傾けず、申立人らが請求した5名の証人の尋問をすべて却 下した宮崎裁判長ほか2名の裁判官に、裁判の公正を妨げるべき事情があることは明ら かである。 疎 明 資 料 1 甲第1号証 証拠申出書(1)(平成19年7月9日付) |
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