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平成19年(ウ)第777号


         忌 避 理 由 書


                          2007年11月5日

 東京高等裁判所民事第21部 御中

                    申立人ら代理人
                      弁護士  上 田  誠 吉
                      弁護士  坂 本    修
                      弁護士  今 村  幸次郎
                               外32名

第1 当事者


  別紙当事者目録記載のとおり

第2 申立の趣旨


   東京高等裁判所第20民事部裁判長裁判官宮崎公男、裁判官山本博、裁
  判官今泉秀和に対する忌避を理由があるとする裁判を求める。



第3 申立の理由


 1 申立人ら
   申立人らは、東京高等裁判所平成19年(ネ)第2475号配転無効確
  認等請求控訴事件(以下「原事件」という)の控訴人らである(被控訴人
  は東日本電信電話株式会社外
1名)。

   原事件は、被控訴人が平成14年に行った大規模リストラの中で、新設
  子会社への移籍を拒否したために首都圏へ異職種広域配転をされた申立人
  らが、配転は移籍拒否に対する不利益措置であって業務上の必要性に基づ
  くものではないことなどを理由に、その無効確認等を求めるものである。

 2 原事件のこれまでの経過

  (1)東京地裁への提訴と地裁判決
   申立人らは、平成14年9月25日に東京地裁に本件を提訴し、事件は
  民事第19部に係属した(平成14年(ワ)第20737号)。

     同地裁民事第19部(中西茂裁判長)は、平成19年3月29日、申立
  人側全面敗訴の判決を言い渡した(判例時報
1970109頁、労働判例937
   22
頁)。

   地裁判決は、@被告らの経営状態は「本件構造改革を実施しなければ直ち
   に危機に瀕する状態であったとまでは考えにくい」としたものの、将来の
   経営悪化の予測に基づく「構造改革」(賃金が2ないし3割下がる新設子
   会社への業務のアウトソーシングと51歳以上社員を子会社へ移籍〔退職
   再雇用〕させる「雇用形態選択」制度を中核とする構造改革リストラのこ
   と、以下単に「構造改革」という)の必要性・合理性を安易に認め、A
NTT
    グループ全体の安定した経営状態は、法人格を異にする被告らによる「構造
   改革」の要否とは関係ないとした。そのうえで、B「構造改革」の必要性が
   認められる以上、子会社への業務のアウトソーシングにより「担当職務がな
   くなった者」(移籍拒否者)に対する配転の有効性判断基準は緩やかでよい
   とし、C賃金が2割から3割下がる子会社へ移籍(退職再雇用)するかどう
   かを選択させる「雇用形態選択」制度は、その選択が各人の自由意思に委ね
   られていたのであるから、その内容・手法に不当な点はなく、移籍拒否者に
   対する配転にも不当な動機・目的はないとするなど、被控訴人らの主張をほ
   ぼそのまま認めるものであった。

  (2)控訴提起と第1回口頭弁論期日までの経過
   申立人らは、この判決を不服として、平成19年4月11日(以下、平成
  19年については月日のみ表示する)、東京高等裁判所に控訴を提起した。

   原事件は、同高裁第20民事部に係属し、第1回口頭弁論期日は同年7
  9日午後3時と指定された。

   申立人らは、5月31日、控訴理由書第1部及び第2部を提出した。この
  中で、申立人らは、被控訴人らの経営状況を
NTTグループ全体の経営状況か
  ら切断して判断することは誤りであること、被控訴人らには「雇用形態選択」
  を中核とする「構造改革」を行うほどの経営の悪化はなかったこと、「雇用形
  態選択」制度における社員の選択は自由ではなかったこと、移籍拒否者に対し
  て配転という不利益を課することによって移籍選択への「誘導」がなされたこ
  と、申立人ら各人毎に関する個別事情についての地裁判決の認定の誤りなどに
  ついて詳しく主張した。

   これに対し、被控訴人らは、7月4日付で、答弁書、準備書面(1)ないし
  (4)を提出し、これらの書面の中で、被控訴人らの経営環境は厳しく会社は
  「構造改革」を必要としていた、「雇用形態選択」において強制など存在しな
  い、本件各配転に不利益付与目的はなかったなどとして、申立人らの主張を全
  面的に争った。

  (3)第1回口頭弁論期日
   第1回口頭弁論期日は、7月9日午後3時から東京高裁101号法廷で行わ
  れた。

     控訴状、答弁書、控訴理由書第1部及び第2部、申立人ら準備書面(1)
  (控訴理由書の正誤表)、被控訴人ら準備書面(1)ないし(4)の各陳述
  がなされるとともに、甲第255号証ないし265号証、乙575号証ない
  し591号証がそれぞれ提出され、採用・取り調べがなされた。


    さらに、申立人らは、同日付証拠申出書(1)(甲1)を提出し、渡辺洋
  一郎・村上隆久・新健治の各証人尋問を請求した。


    これら3名は、平成14年の雇用形態選択において、子会社への移籍(退職
  再雇用)を選択した社員であるが、それぞれ重病の妻の看病や老親の介護等の
  事情があって、転居を伴う配転の不利益を考慮すれば移籍しか選択の余地がな
  く、選択は自由意思に基づくものでなかったこと等を立証するための証人であ
  った。移籍を選択した者の証人尋問は、一審では行われておらず、地裁判決が、
  雇用形態選択制度の内容・手法に不当な点がないことを根拠に本件各配転に不
  当な目的はなかったと判断していることからすれば、控訴審における重要証人
  であることは明らかである。


    これに対し、被控訴人らは、同日付意見書(甲2)を提出し、「雇用形態選
  択」制度の内容や運用過程等は本件と関係ないなどの意見を述べて、申立人ら
  の証拠申出を却下するよう求めた。


   宮崎裁判長は、この証拠申出に対する採否の判断を留保し、次回期日に決定
  するとしたが、その際、この事件の証拠はすでに十分出されているなどと述べ、
  これらの証人の採用に消極的な姿勢を示した。


   同裁判長は、次回期日までの双方の主張書面の提出日程(申立人らは9月2
  0日までに控訴理由の補充及び被控訴人ら準備書面(1)ないし(4)への反
  論を行い、被控訴人らは10月15日までにそれに対する反論を行う)を確認
  したうえで、次回期日を10月31日午後3時と指定し、第1回期日は終了した。


  (4)期日間における準備書面の提出
   申立人らは、9月20日に準備書面(2)第1部及び第2部を提出し、移籍
  拒否に対する不利益扱いは許されないこと、原判決が配転法理に反しているこ
  と、被控訴人ら及び
NTTグループの経営状況に「構造改革」を行うほどの悪化
  はなかったこと等について、さらに主張した。


   これに対し、被控訴人らは、10月15日付で準備書面(5)第1部及び第
  2部を提出し、申立人らの準備書面(2)に対する反論等を行った。


   その中で、被控訴人らは、「雇用形態選択」制度を採用したことの正当性や
  手続の公正性を主張するために、
NTT労組津田委員長(当時)の挨拶を2頁に
  わたって引用した。さらに、本件各配転は移籍拒否を理由とするものではない、
  営業収益の減少などで「構造改革」を実施する必要性が高かったなどと主張し、
  申立人側の主張を全面的に争った。


   被控訴人らの準備書面(5)における主張に反論するため、申立人らは、1
  0月26日、準備書面(3)(同月31日付)を提出した。


   この中で申立人らは、被控訴人らを含むNTTグループ各社が原告となった企業
  年金減額不承認処分取消請求訴訟の判決(東京地裁民事第3部平成19年10月
  19日判決)においても、被控訴人ら及び
NTTグループの経営の悪化は否定され
  ていることを引用して、「構造改革」の必要性・合理性がなかったことを主張す
  るとともに、
NTT労組との協議及び合意は、「構造改革」及び各配転を正当化す
  るものとはなりえないこと等について主張した。


   また、申立人らは、同月29日、後述する同月31日付の証拠申出書(甲5)
  を提出し、新たに証人として鬼山敏雄、岩崎俊の2名を申請した。


     これに対し、被控訴人らは、申立人ら準備書面(3)に対する反論書面として、
  10月30日付準備書面(6)を提出した。この中で被控訴人らは、
NTTグルー
  プ各社は独立の法人として独立採算を求められている旨を強調しつつ、「構造改
  革」の必要性を改めて主張し、本件異動は移籍拒否の故ではないなどとして、申
  立人らの主張を全面的に争った。


 3 忌避申立に至る経過

   (1) 第2回口頭弁論期日
    10月31日、第2回口頭弁論期日が開かれた。
    申立人(控訴人)志賀に関する請求の趣旨変更申立(被控訴人は棄却を求め
  た)、9月20日付申立人ら準備書面(2)第1部及び第2部、10月15日
  付被控訴人ら準備書面(5)第1部及び第2部、10月31日付申立人ら準備
  書面(3)、10月31日付被控訴人ら準備書面(6)が各陳述され、甲第2
  66号証から321号証、乙592号証から648号証が提出された。乙号証
  の中には、9通にのぼる会社管理職社員等の陳述書が含まれていた。


  (2)陳述書の提出に対する異議とその取扱い
     当期日に提出された書証のうち甲号証については、すべて採用され、取り調
  べがなされた。


     申立人らは、乙号証のうち9通の陳述書(乙602恩田英之陳述書、乙60
  7田村明久陳述書、乙617鈴木浩陳述書、乙619長門徹陳述書、乙620中
  村光伸、乙624及川勉陳述書、乙627内藤政道陳述書、乙630石山哲雄陳
  述書、乙645内藤政道陳述書)について、会社管理職社員らが会社の主張を一
  方的に陳述した供述証拠であって、反対尋問の機会も保障せず採用して取り調べ
  ることは著しく不公平かつ不公正であるとして、その提出に異議を述べた。


    とりわけ、鈴木浩、中村光伸、及川勉、内藤政道、石山哲雄については、一審
  でも長大かつ詳細な陳述書を提出したうえ、証人として出廷し証言も行っている
  ことから、これらの者の陳述書(乙617、620、624、627、630)
  については、時期に遅れたものとしても却下を求める旨の申し立てを行った(1
  0月31日付訴訟進行についての意見(1)、甲3。なお、乙号証のうち異議の
  ないものについては、採用して取り調べがなされた)。


   これに対して、被控訴人らは、異議のあった各陳述書は単なる書証として提出
  したもので証言の代用ではなく、すべて申立人らの新しい事実主張に関する点に
  限って陳述したものであるから時期に遅れたものでもないなどとして、申立人ら
  の異議及び申立の却下を求めた(10月31日付意見書、甲4)。


    この点について、宮崎裁判長は、異議のあった陳述書は客観的な記述と考えら
  れる、申立人らの準備書面にも一部引用されている、陳述書の信用性を慎重に考
  えるべきであるというのは正論ではあるが、その辺は裁判所に任せてほしい、な
  どと述べ、9通すべて採用するとの決定を行った。


    申立人らは、この決定について、訴訟指揮に対する異議を申し立てたが、合議
  の後、同裁判長は、陳述書は採用する、異議については調書にとどめておくと述
  べた。


   (3)証人の採否をめぐるやり取り
    @鬼山・岩崎証人の申請とその立証趣旨
     第2回口頭弁論期日において、申立人らは、前述の証拠申出書(甲5)に基
   づき、鬼山敏雄、岩崎俊の
2名の証人を採用するよう求めた。

     鬼山証人は、申立人らが所属する通信産業労働組合のOBで、被控訴人ら及び
    NTT
グループの経営分析を行ってきた者である。その立証趣旨は、(@)NTT
   ループは、財務・経営上及び法律上特別の一体性をもっており、被控訴人らの
   経営状況を
NTTグループのそれから切り離して議論することは不適切であるこ
   と、(A)
NTTグループの経営状況は、本件「構造改革」実施の前後を通じて
   世界的にも超優良であって、
NTT東西会社において、従業員の労働条件を大きく
   切り下げる「雇用形態選択」制度を導入する必要性・合理性はなかったこと、
   (B)被控訴人
NTT東日本単体でみても、再編された平成11年度以降、毎期
   黒字を達成し、とりわけ、本件「構造改革」に着手した平成14年度以降、6
   33億円(平成14年度)、978億円(平成15年度)、976億円(平成
   16年度)という巨額の経常利益を計上しており、被控訴人らが主張する「売
   上高の減少に伴う収支の悪化」という事態は存在しなかったこと、(C)本件
   構造改革に必要性・合理性があることを前提にして、本件各配転に関する業務
   上の必要性の判断基準を緩和した原判決は誤りであること、にあった。


    岩崎証人は、本件「構造改革」が実行された当時の通信産業労働組合の委員
   長であるが、同証人の立証趣旨は、
(@)NTT労組との合意をもって本件「構造
   改革」を正当化することは誤りであること(
NTT労組員を含む多くの社員が本
   件「構造改革」に反対していたこと、このことを契機に多くの社員が通信労組
   に加入してきたことなど)、
(A)本件各配転について、被控訴人らが、申立人
   らの同意を得るための努力を何ら行っていないこと(人選された理由、配転先
   での業務内容、赴任期間の見通し等について事前に全く説明がなかったことな
   ど)、
(B)本件各配転を行うについて、被控訴人らは、申立人らの個別事情を
   配慮しようとしなかったこと(申立人らは、本件各配転の具体的検討等がなさ
   れていた時期に上長との面談等を拒否した事実はなく、各個別事情を申告して
   いたことなど)、
(C)本件各配転に至る手続が適正であったとする被控訴人ら
   の主張は事実でないこと、にあった。


      いずれも、一審判決の事実認定、控訴審での双方の主張をめぐる重要論点に
   関する証人であった。


      こうして、申立人らが7月9日付で申請した3名の証人とあわせて5名の証
   人(7月9日付証拠申出書に基づく渡辺・村上・新の各証人と10月31日付
   証拠申出書に基づく鬼山・岩崎の各証人)の採否が問題となった。


  A5名の証人採用を求める申立人らの意見
     申立人らからは、これらの証人の取り調べの必要性について、10月31日付
  「訴訟進行についての意見(2)」(甲6)に基づき、坂本代理人が、以下のと
  おり意見を述べた。


    (ア)渡辺洋一郎、村上隆久、新健治、各証人の取調べについて
    証人らはいずれも退職再雇用(移籍)に応じた者である。原審
   以来、本件での「雇用形態選択」制度が、51歳以上の対象労働
   者にとってどういう内容、性格をもつものであるかが重要な争点
   となっている。控訴人らは、この間、OS会社への移籍は、(@)
   
これを選択することは著しく不利益であり、真に自由に選択でき
   るものならば、選択する者はいなかったこと、(A)だから、被控
   訴人らはこれを選択させるために「通常甘受できない」不利益にな
   る「満了型」をつくり、移籍を選択しない者について、本人の意思
   にかかわらずに満了型選択者とみなしたこと、(B)その多くに対
   し、職能スキルを否定、家庭をもつ女性に1日往復4時間を超える
   遠距離通勤、北海道から東京へなどの単身赴任配転、本人の健康や
   家族状況無視、しかも無期限配転という非人間的な不利益処遇した
   こと、(C)控訴人らの本件配転は、そのためのものであると主張し
   続けてきた。


    これに対して、被控訴人らは控訴人の主張を全面的に争っている
   が、その反論の要点は、移籍は、()さしたる不利益でなく、(b)
   選択者は自由な意思で選択したにすぎないというものである。

    控訴人らと被控訴人らのこの主張の真否は、当審の重要な争点の
   ひとつである。移籍の不利益性は、客観的にも明白であると考えら
   れたため、原審では移籍者の直接の証人申請を控訴人らはしていな
   い。しかし、原判決は、被控訴人らの主張を根拠なく認めた。当審
   でも被控訴人らは、およそ社会正義に反する原判決の認定は正当だ
   とし、これを引用して、自らの主張を繰り返している。


    そこで、控訴人らは、移籍を「選択」した直接の当事者であり、
   自らの体験によって事実を証言できる上記3人の証人の申請をし、
   取り調べを求めることにした。

      上記3名の証人はいずれも移籍に応じた者であるが、(@)応ずる
   ことがいかに不利益だったか、(A)にもかかわらず、なぜ、応じざ
   るを得なかったか、そして、(B)応じた結果、どのような不利益な
   状況になったかを証言するものである。


     上記争点について、いずれも真に公正かつ正当に事実を認定する
   上で、必要・不可欠の証人であるので、その取調べを強く求める
   (但し、尋問時間については各20分に短縮する用意があることを
   意見書(2)に記載)。

   (イ)岩崎俊証人の取り調べについて
    岩崎俊証人は、原審においても証言している。しかし、当審にお
   いて、被控訴人らは、NTTの多数組合である
NTT労組が、本件構
   造改革、退職・再雇用制度の設定と実行に合意したことを強調し、
   とりわけ、当時の同労組津田委員長の「あいさつ」を引用して、被
   控訴人らが説明義務を履行したことなど、「雇用形態選択」制が必
   要かつ合理的であったことを主張している。しかし、同委員長の
   「あいさつ」なるものは、事実と道理に反している。
そのことにつ
   いて、被控訴人らがこうした主張を当審でしている以上、通信産業
   労働組合の委員長であった岩崎証人が反証として、証言することは
   控訴人側の当然の権利であり、義務でもある。


    なお、当審において被控訴人らは、配転について説明義務を尽く
   したことを主張し、通信産業労働組合とも協議を尽くした旨主張し
   ている。こうした主張が事実に反することについても、岩崎証人は
   あわせて証言し、真実をさらに明確にするものである。これらは、
   なお当審での重要争点であるので、岩崎証人の取調べをつよく求め
   る(なお、尋問時間については20分間に短縮する用意がある旨を
   意見書に記載)。

  (ウ)証人鬼山敏雄の取調べについて
    本件の中心争点の一つは、本件構造改革の重要な柱としての「雇
   用形態選択」制の必要性・合理性の有無である。つまり、被控訴人
   らの財務・経営上、そのような対応をすることが必要かつ合理的で
   あったかどうかである(一般論としての構造改革の当否の問題では
   ない)。そして、そのことと不可分の争点として、被控訴人らの財
   務・経営状況をその100%持株会社であるNTT(及び同グルー
   プ)の超優良な財務・経営状況と切り離して考えることの是非があ
   る。ところが、被控訴人らも原判決も、被控訴人らとNTT(及び
   同グループ)とは別人格であるということを、最大の理由として、
   控訴人らの主張を否定した。

      一審裁判所は、「被控訴人の100%の持株会社であり、NTT
   法によって法的にも一体性をもつNTTとNTTグループがどんな
   に優良な財務・経営状況にあったとしても、法人格が別なら関係な
   いのでは」とか「法人格を異にする会社の財務・経営状況がなぜ被
   控訴人のそれと関係するのか」という釈明をなにひとつしなかっ
   た。それなのに、控訴人らが、くり返しその非常識な誤りを指摘、
   解明した「別人格」論に立って、被控訴人らの財務、経営状況を判
   断し、そして、そのことを根拠にして、「雇用形態選択」制の必要
   性、合理性を認め、移籍に応じなかった者を「みなし満了型」と
   し、本件のごとき配転をすることの「業務上の必要性」を認めた。
   被控訴人らは当審においても、この判旨に依拠して同様の主張をし
   続けている。控訴人らは当審において、原判決のこうした判示なら
   びにこれと同旨の被控訴人らの主張の誤りについて、原審での主張
   を多くの新たな事実で補足し、徹底的に反論した。


    当然のことながら、当審での新たな主張事実については、控訴人
   らとして立証が必要である。この点に関して当審で新たに提出した
   書証についても、その成立の真正のみならず、内容について正確な
   判断をするには、事実を知る証人の証言が必要である。鬼山証人
   は、本日付証拠申出書(甲5)に記載しているように、この重要な
   争点事実について、長期にわたって調査、検討し、具体的な知識を
   もっている人物で、これらの点について証言できる最良の証人に他
   ならない。ちなみに、これに類する控訴人側の証人はこれが初めて
   であり、かつ、おそらく控訴人らのおかれている地位ならびに社会
   的状況に照らして、申請可能なただ1人の証人である。よって、こ
   の重大な争点について、必要不可欠な同証人の取調べをつよく求め
   るものである(但し、尋問時間については30分間に短縮する用意
   があると意見書に記載)。

  (エ)「審理をつくす」ことを求める意見
    まず、控訴人らは、いかなる意味でもいわゆる「引き延ばし」を
   意図しているものではない。控訴人ら9名のうち、4名はすでに本
   訴経過中に退職になっている(来年3月にはさらに2名退職予定)
   のであり、控訴人らは誰よりも早期の審理を求めてきている。当審
   で5名の証人の証拠調べを行うことは、主尋問、反対尋問を含め
   て、午前、午後を連続すれば1日で充分に可能である。あるいは双
   方の工夫、努力にもよるが、午後の1開廷でも不可能ではない。審
   理に要する日時はわずか1日であり、けっして、「訴訟の遅延」に
   なるものではない。


    控訴人ら(及びその家族ら)の奪われた権利、そして、現職とし
   て被控訴人において働いている控訴人ら(飯野和子、金子恵美子、
   佐藤清、志賀正男、笹原武)の現に侵害され続けている人権は回復
   されなければならない。本件で正しい裁判がされることは、9人の
   控訴人の人権及び家族らの人権にとって極めて重大なものであり、
   また、それはこの国の労働のルール、「法の支配」(法治主義)に
   とっても重要である。

    世界でもトップの巨大通信企業であり、日本の主要企業でもつね
   に上位にあるNTTが、本件のようなやり方で、51歳以上の労働
   者の賃金を3割〜1割5分切り下げて、基幹業務をマル投げし、
   100%株式を有する
OS会社に移転させることができるとなれば、
   この国の大企業は我れ先にと同じ手法をとるであろう。そして、そ
   うしたやり方に同意しなかった者を、「全国転勤型」とみなして、
   本件のような不利益処遇をすることが許されるとなれば、これまた
   同じ手法が横行するであろう。

    そんなことが裁判所で認められれば、その結果なにが起きるかは
   明らかである。
      (@)65歳定年を定めた高齢者雇用安定法は空洞化し、事実上の
      50歳定年制が広がる。

      (A)会社法(企業分割法制)と労働契約承継法が労働者保護のた
      めに明記した、対象労働者の労働条件の不利益変更の規定は
      NTT型「カラクリ」によって事実上空文になる。

      (B)長い間に形成された整理解雇の四要件や就業規則の不利益変
      更禁止、さらには、少なくとも一方的な不利益配転に歯止め
      をもうけた配転法理などの判例ルールは潜脱される。

      (C)育児・介護休業法もまた実効のないものになる。

    そして、さらに、大きなルールの破壊が生ずる。それは、憲法と
   諸法と信義則に基づく法治主義の大原則、法治国家・法治社会が崩
   壊するということである。大企業らに利益を追求する「自由」はあ
   っても、そこに働く労働者が人間らしく生き、働くことを侵害する
   ような場合には、その「自由」は制約されるというのが法治主義の
   基本である。さらに言えば、大企業らの利益至上の一方的な労働の
   ルール破壊が行われたときに、被害を受けた者が裁判所に訴えでれ
   ば、裁判所は歯止めをかけてくれる。労働者は「まだ裁判所があ
   る」と期待することができる−それが今日のこの国の法治主義であ
   る。

    そのために、本件訴訟が手続において公正に、具体的には控訴人
   ら申請の証人を採用し、取調べて審理を尽くすことを求めるもので
   ある。


  B証人採用に反対する被控訴人らの意見
     被控訴人らは、当日の裁判において申立人らの前述の5名の証人申
  請について、すべて不必要であるとして、却下をもとめた。


     被控訴人らの寺前代理人は、渡辺洋一郎、村上隆久、新健治の3名
  については、被控訴人らの7月9日付意見書(甲2)にもとづいて、
  鬼山敏雄、岩崎俊両名については、10月30日付意見書(甲7)に
  もとづいて、いずれも却下を求める意見を述べた。


   Cこれに対する申立人らの反論
   被控訴人らの意見に対して、申立人らは、ただちに反論した。申立
  人らを代理して、坂本代理人が概要以下のとおり述べた。


     (ア)渡辺洋一郎他2名の採用反対に対する反論
        被控訴人らの意見は、一言でいえば、本件争点と無関係な事実
    についての証言趣旨だからということである。箇条書で要約すれ
    ば、(@)尋問事項は、「3人固有の事情であり、3人は本件当事
    者ではないから、本件とはいかなる意味でも関係がない」、(A)
    「『雇用形態選択』制度の合理性、運用の適法性、あるいはその
    過程に瑕疵が存したかどうかは本件とは関係ない」、(B)「雇用
    形態選択」についての人事担当者の説明については、控訴人らと
    同じ職場にいた者ではない(のだから無関係であり、取り調べて
    もなにも立証できない)というのが被控訴人らの反対意見の要点
    である。

     被控訴人らの反対意見は、全くのすり替えであり、道理に反す
    る暴論である。

        渡辺他2名の証人をもって控訴人らが立証しようとする直接の
    事実は、以下のとおりである。
        (@)「雇用形態選択」制度が、その対象とされ、これに応じた
      者にとって、著しく不利益なものであったこと、

        (A)にもかかわらず応じたのは、応じない場合に「満了型」と
      みなされるということが耐え難い不利益であったからである
      ということ、

        (B)移籍に応ずることは、さしたる不利益ではなかったとか、
      応じたのは、応じた者の自由な選択だったとか言う主張が事
      実に反すること、

        (C)著しい不利益に応じさせるには、「満了型」の不利益を強
      調し、さらに、それが実際にどれほど苛酷な不利益になるの
      かを、全従業員に知らしめるために本件配転が強行され、無
      期限に維持されていること


        この相関連する一連の事実こそ原審以来の控訴人らの一貫した
    主張であり、被控訴人らが全面的に否定する事実である。3名の
    証人は、これらの事実を立証するための証人なのである。


     当然のことながら、控訴人らのこの主張の当否は本件での原審
    及び当審での重要な争点である。この争点について、公正な判断
    をする上で、前提として不可欠なことは、(@)及び(A)の事実の
    有無である。(@)及び(A)の事実がなかったら、その余の(B)
    (
C)(D)もまたないことになるからである。

        上記(@)及び(A)の事実は、誰から見ても常識であると控訴人
    らは考えた。おそらく、直接に「雇用形態選択」を要求された全
    労働者はもとより、当時のマスコミをも含めて誰もが、そのこと
    を知り、認める事実である。そうであっても、もちろん、控訴人
    らは、原審において、証人岩崎俊及び原告らの本人尋問等で、そ
    のことを証明した。率直に言えば、それをもって社会通念上、必
    要な水準での立証はしたと考えたのである。だから、直接の体験
    者である移籍に応じた者からの証人申請はしていなかった。

     ところが原判決は、「退職再雇用型の労働条件は合理的であ
    る」、「選択は自由意思に委ねられていた」とし、被控訴人らの
    主張をマル呑みしてしまった。


     控訴人らは、原判決のこの事実誤認を当審で追及している。そ
    して、こうした主張を証明するために、初めて当審で、移籍選択
    を直接体験した渡辺他2名の証人申請をしたのである。


     控訴人らの立証趣旨に照らせば、個々の控訴人の働いていた職
    場にいた移籍者でなければ証人適格がないというのは、そもそも
    ナンセンスである。被控訴人らに限っても、移籍に応じた(応じ
    させられた)者は、約2万6000名(NTT西日本では約2万
    9000名、合計約5万5000名)にのぼる。51歳以上で、
    移籍に応ずることを求められ、これに応じた者の多くの事情には
    共通性がある。もちろん、みなし満了型で受ける不利益の程度、
    家族や本人の健康状況などについては、人様々に違いはあろう。
    しかし、51歳以上の対象者についての退職再雇用(移籍)の処
    遇は共通である。どの職場によって、どう違うというものではな
    かった。3人の証人は、この制度の不利益を身をもって証言でき
    る、言うならば貴重な「サンプル」に外ならない。


     「雇用形態選択」制度の内容・手法の当否が、本件配転の適法
    違法の重要な判断要素であることは、原判決でさえ認めている。


     「雇用形態選択」による不利益の有無、その程度が同制度の当
    否を判断する上で、重要な要素であることはいうまでもない。
     しかしながら、原判決は、「退職再雇用」を「選択」すること
    による不利益を軽視し、「選択者」の多くが、応じなければ満了
    型とみなされることの不利益がどんなに大きいと感じていたか、
    そのことが「選択」にどんな重圧を加えるものになっていたかに
    ついては、被控訴人らの主張をマル呑みして、控訴人らの主張を
    退けた。

     そして、原審では、被控訴人側の土井証人は、不利益性を否定
    する証言をしている。しかし、被控訴人らも、原審で直接、移籍
    者によって、不利益なものではなかったとか、満了型とみなされ
    るということが、移籍に応ずる動機になってはいなかったという
    立証はしていない。直接の証人による立証は双方になかったので
    ある。

     以上の経過のもとで、控訴人らが、当審で今回、その重要な主
    張を立証するために、渡辺他2名の証人申請をしたのは当然であ
    る。被控訴人らの反論は、たんに誤っているにとどまらず、結局
    は、重要な事実について、控訴人らの立証の権利を阻害しようと
    するもので、控訴人らの裁判を受ける権利を侵害する不公正な主
    張であり、とうてい認めるわけにはいかない。


     (イ)岩崎俊の採用反対に対する反論
     岩崎俊の証人を今回改めて申請するのは、被控訴人らがNTT
    労組津田委員長(当時)の「あいさつ」を引用して、その主張を
    裏付けようとしているからである。当審で、岩崎証人を尋問する
    必要性は高い。

    (ウ)鬼山敏雄の採用反対についての反論
         鬼山証人の採用に反対する被控訴人らの意見は、結局は被控
    訴人らが計画し、実行したリストラ合理化計画、その中核である
    「雇用形態選択」制度とその実行のために、一体不可分の関係に
    ある「みなし満了型」の設定の必要性、合理性について、控訴人
    らの反対立証(とくに証人による反証)を認めないというもので
    ある。このような主張は、企業(とりわけ大企業)が組織的、計
    画的に立案し、実行したリストラ・合理化計画について、その結
    果、不利益を受けた労働者側が反証する権利を奪うもので、公正
    な裁判の構造的破壊にいたるものである。


     被控訴人らが鬼山敏雄の証人調べに反対する理由の中心は、鬼
    山の立証趣旨のほとんどが、被控訴人及び
NTTグループの財務状
    況等については知らない(知り得る立場、経験、能力がないとい
    う趣旨)事柄なのだから、証人として調べる必要がないというこ
    とにある。

     しかし、このような主張は、道理にも事実にも反する。それだ
    けではなく、「強者の奢り」に骨まで浸り、弱者側の公正な裁判
    を受ける権利を否定する不公正な主張に外ならない。

     被控訴人らの「構造改革」リストラ、そしてその中核である
    「雇用形態選択」制度とみなし満了型設定、そして、そのための
    基幹業務マル投げの
OS会社制度などの目的と内容について、その
    立案、実行にあたった中枢の人物を、控訴人らは証人に申請する
    ことは実際には不可能である。事前に会って、彼らが何を知って
    いるかをチェックすることも決して出来ない。


     仮に控訴人らが依頼したとしても、こうした「事情に明るい人
    物」は、被控訴人の財務・労務の中枢にいて、控訴人らの依頼を
    受諾する訳がない。もし、真実を自由に証言するならば、控訴人
    らの主張を裏付けてくれるであろう「人証」はすべて、巨大な
    
NTTと被控訴人らの機構の中にあって、控訴人らには手に触れる
    ことさえできないのである。

     このことは、大企業のルール違反の是正を求める裁判、たとえ
    ば、解雇、差別、過労死、公害の諸事件に共通することである。
    それは、社会常識であり、「裁判上顕著な事実」だと断言でき
    る。それが現実であることを被控訴人は十分に承知しているとこ
    ろである。

     被控訴人らは、リストラ合理化を実行した中枢職制らを証人に
    申請し、充分に打ち合わせた上で(実際には被控訴人側の主張に
    合致するように仕上げて)長文の陳述書にまとめて、乙号証とし
    て提出し、これにもとづいて主尋問ができる。控訴人らが、こう
    した証人に反対尋問で、主尋問と異なる真実の証言をさせること
    は「至難の業」である。


     さらに言えば、被控訴人らの提出する書証は、当初から構造改
    革を善とし、その正当性、合理性、必要性を企業の内外に明らか
    にするためにつくられたものであって、仮に控訴人らの主張する
    ような脱法的で、反社会的な目的があっても、そんなことを文書
    にしておくことはあり得ない。

     鬼山敏雄証人の採用は、単に証拠採用の合理性、必要性にとどまらず、公平、
     公正な裁判を受ける権利に直結する問題である。鬼山敏雄の証人採用をつよく
     求める。


 (4)宮崎裁判長ほか2名が下した結論−証人申請をすべて却下
    両者の意見陳述書の後、宮崎裁判長は、合議のため休廷を宣言し、3人の裁判官は、
  別室で20数分にわたる合議を行った。


   その後再入廷した宮崎裁判長は要旨以下のとおり述べて、申立人らが請求した5名の
  証人すべてについて、採用しない旨の決定を行った。

  @渡辺、新、村上各証人について
    本件と直接の関係はなく、控訴人(申立人)らとしてもすでに主張立証しているとこ
  ろである。また、職制の威迫があったかどうかは記録にある。よって、これら3名は証
  人として採用しない。


  A鬼山証人について
    従前から双方が主張立証している点に関する証人である。主張を尽くしているし、書
  証も提出されている。この点については、記録から総合的に判断したい。従前の主張を
  カバーするという趣旨と思われるが、証拠としてはすでに出ているもので足りると考え
  る。よって、採用しない。


  B岩崎証人について
   岩崎証人については、原審ですでに2回にわけて尋問している。当審としては、やは
  り採用しない。


 (5)坂本代理人からの異議とこれに対する裁判
  5名の証人のすべてを採用しないとの決定に対し、坂本代理人は、概要以下のとおり、
 異議を述べた。


  @渡辺、新、村上各証人について
    退職再雇用に応じた社員の証言は今まで出ていない。
     重要な論点であり、この点の立証を尽くさないのであれば、控訴人らの裁判を受け
   る権利の侵害といえる。


     3人が多いというのであれば、このうちの誰かに絞ることも考える。審理の遅延に
   はならない。

  A鬼山証人について
    記録にあるというが、「法人格が違う」という点については、地裁判決が明確に打
   ち出した点である。それまで一度の釈明もなく、「法人格が違う」というだけでは割
   り切れない問題があることについては、これまで、意識的な立証がなされてこなかっ
   た。

     控訴審における重要論点であり、すでに述べたように、本件のような大企業の計画
   ・立案したリストラ合理化施策の狙いと内容について真実を明らかにするうえで、控
   訴人らとって、鬼山証人は、唯一の証人である。これさえ拒否することは、控訴人ら
   の裁判を受ける権利の侵害になる。


  B岩崎証人について
    今回、岩崎証人を申請したのは、控訴審になって、被控訴人がNTT労組委員長の言
   動を持ち出したからである。


    これに対する反証の機会を与えてほしいという趣旨であり、現段階で同証人を取り
   調べる必要性は高い。


   C これらの証人を取り調べるのは、一期日あれば足りる。訴訟の遅延にならないよう
   控訴人らとしても最大限努力する。


    これらの証人を採用しないという決定に異議を述べる。この異議さえ認められず、
   そのままの決定ということならば、裁判の公正の問題になると考えるので、この異議
   について慎重に判断してほしい。

    この異議に対し、宮崎裁判長ほか2名は、裁判官席で簡単な合議を行った。その結
   果、宮崎裁判長は、「さきほどの合議のとおり、証人はいずれも採用しない、異議は
   却下する」と述べた。

 (6)忌避申立
   5名の証人のすべてが不採用とされ、それに対する異議も退けられた。このような事
  態は、もはや公正な裁判とはいえなかった。


     申立人らは、やむを得ず、3名の裁判官に対する忌避を申し立てることとした。

   申立人らを代理して坂本代理人は、「大変遺憾ですが、このような状況では、申立人
  らの公正な裁判を受ける権利が侵害されていると考えざるをえません。裁判官3名に対
  する忌避を申し立てます。忌避の詳しい理由は3日以内に書面で提出します。」と述べ
  、本件忌避申立に及んだものである。


4 裁判の公正を妨げるべき事情の存在

 (1)渡辺・村上・新の各証人の不採用
  本件は、通常一般の配転事件ではない。本件は、約3万人にも上る51歳以上の社員を
 新設子会社に移籍させることを中核とする大規模「構造改革リストラ」の中で、移籍を拒
 否したことの故に会社が配転による不利益を課した事件である。本件各配転がいかなる目
 的でなされたのかを解明するためには、「雇用形態選択」制度の中で、それがどういう機
 能を果たしたかを明らかにすることが必要不可欠である。

  一審判決は、「雇用形態選択」制度の内容・手法に不当な点はないから、本件各配転の
 目的にも不当な点はないと結論づけた。したがって、雇用形態選択制度の内容・手法・運
 用等の実態に踏み込んだ立証が控訴審ではどうしても必要であった。このため、申立人ら
 は 、「雇用形態選択」においてやむにやまれず子会社への移籍(退職再雇用)を選択し
 た社員である渡辺・村上・新の各証人を申請した。


  「雇用形態選択」制度において、51歳以上の対象者にとって異職種広域配転がどういう
 意味をもつのか、移籍拒否の場合にそうした配転をされるコース(「満了型」と名付けら
 れている)を選択したものとみなされるということが「選択」にどのような影響をあたえ
 るのか、自由な意思で移籍を「選択」するなどということがありうるのか、これらの点は
 、実際、その「選択」の場に立たされて、移籍を「選択」せざるを得なかった者でなけれ
 ば語ることはできない。

  「雇用形態選択」制度における「選択」が社員の自由な意思に委ねられていたなどという
 事実が存在しないことは、「選択」を強いられた当人によってはじめて直接に明らかにし
 うるのである。

  一審判決は、選択が自由意思でなされたことを「雇用形態選択」制度の内容等の相当性判
 断の根拠としていた。これが事実誤認であることを明らかにするためには、これら3名の
 証人尋問が必要不可欠なのである。しかも、一審では、申立人ら被控訴人らのいずれから
 も、退職再雇用者のなかからは一人も証人が出されていない。三人の証人は、「初めての
 直接証人」だったのである。

  これに対し、宮崎裁判長は、これらの証人は本件と直接関係ない、申立人らはすでに主張
 立証している、職制の威迫の有無についてはすでに記録にある、などと述べて、これら3
 名の証人申請を却下した。


  しかし、これらの証人の体験を本件とは直接関係ないとして聞く耳をもたない態度をとる
 ことは、裁判所としておよそ公正を欠くものである。


  申立人らは、まさに、一審判決が問題にした「雇用形態選択」制度の内容・手法の当不当
 、移籍を「選択」した者にとってその「選択」は自由意思に基づくものだったのか否か、
 この点に関して、移籍「選択」を直接体験した証人らによって立証しようとしたのである
 。この点は、「雇用形態選択」において移籍を拒否したために受けた本件配転の効力を判
 断するうえで、きわめて重要なはずである。


  また、確かに申立人らは、これまで、自身の体験等に基づき「雇用形態選択」制度の内容
 ・手法の問題点等について供述し、あるいは証拠提出をしたことはある。しかしながら、
 直接移籍を体験した者の証言は、すでに述べたとおり、これまで一つも出ていない。すで
 に記録にあるから聞かなくてよいなどという理屈は通らない。


  さらに、同裁判長は、職制の威迫の有無については記録にあるというが、申立人らの立証
 趣旨は、威迫の有無に限るものではない。申立人らは、これらの証人によって、一審判決
 のいう「雇用形態選択」制度の内容・手法の当不当の問題と移籍選択が自由意思だったの
 かどうかの点を明らかにするとともに、移籍による不利益は大きくないとの被控訴人らの
 主張が事実に反するものであることを、直接の体験者によって明らかにすることを求めた
 のである。

  申立人らは、この点に関する証人が3名では多いというのであれば、誰かに絞ることもあ
 りうる旨を申し出た。


  それでも、同裁判長は、わずか1名でさえ採用しないという結論を変えようともしなかっ
 た。

  控訴審での最重要争点に関する証人であり、訴訟遅延にならないにもかかわらず、ひた
 すら被控訴人らの意見に同調して証人採用を拒否する姿勢は、単なる訴訟指揮の当否の問
 題を超えて、誰の目から見ても控訴棄却の予断をもって審理を急いでいるものとしか考え
 られない。少なくとも、裁判の公正を疑わしめるものであることが明らかである。


  (2)鬼山証人の不採用
  一審判決は、被控訴人らが行った「雇用形態選択」制度を含む「構造改革」に必要性・
 合理性があったという判断をもとに、「担当職務のなくなった者」に対する配転の有効性
 についての判断基準は緩やかでよいとして、本件各配転の業務上の必要性をすべて認めた
 。


  また、同判決は、「構造改革」の必要性・合理性を判断するにあたり、NTTグループ全
 体の経営状況が安定していても、被控訴人らはグループ全体とは法的に別人格であるから
 関係ない旨を述べていた。


  控訴審において、申立人らは、NTTグループの特殊な一体性、同グループの経営状態が
 世界的に見ても超優良であること、被控訴人ら自身の経営悪化の不存在等について新たな
 事実主張を行い、被控訴人らはこれらの主張を全面的に争った。これらの点もまた、まさ
 に控訴審での最重要争点であった。


  鬼山証人はこの点に関する証人であった。しかも、申立人らにおいて、一審判決が本件
 各配転の有効性判断の大きな根拠とした「構造改革の必要性・合理性」に関する事実認定
 が誤りであることを明らかにする証言を求めることができる唯一の証人であった。


   宮崎裁判長は、この点について、従前から双方で主張立証している、書証もある、記録
 から総合的に判断できる、などとして鬼山証人を不採用とした。


   しかしながら、NTTグループの特殊な一体性や被控訴人自身の経営悪化の予想が事実に
 反することは、一審判決が「法人格が違うから関係ない」との判断を示したこともあって
 、控訴審で、新たに改めて重要争点として浮上したものである。


   被控訴人らは、この点に関する立証手段を膨大に有しており、それらの中から都合のよ
 いもののみ選別して提出することが可能な立場にある。しかしながら、申立人らが、会社
 の経営財務状況について書証で立証するには限界がある。鬼山証人は、労働組合活動の一
 環として、被控訴人ら及び
NTTグループの経営分析を行ってきた者であって、申立人らに
 とっては、この点に関する最適かつ唯一の証人になりうる人物であった。


   鬼山証人についても、申立人らは、尋問時間を30分に短縮する用意があるとまで述べ
 た。それでも同裁判長は、採用しなかった。ひたすら被控訴人らの意見に同調し、新証拠
 の採用を拒絶して、従前の記録に固執する姿は、本件「構造改革」とその中核である「雇
 用形態選択」制度は本件各配転の効力についての判断と無関係であるとする予断、あるい
 は、それは当然に「善」であるとする強固な予断をもって審理に臨んでいるものとしか考
 えられない。

 (3)岩崎証人の不採用
  被控訴人らは、控訴審において、「雇用形態選択」制度を採用したことの正当性や手続
 きの公正・適切性を主張するにさいして、その一つの根拠として
NTT労組津田委員長の挨
 拶を引用した。


  それ以外にも、いくつもの箇所でNTT労組との合意を強調して主張している。また、それ
 との対比で申立人らが所属する通信労組の対応を控訴審でも繰り返し非難している。


  したがって、本件「構造改革」に対するNTT労組員を含む社員の反応はどのようなものだ
 ったのか、
NTT労組委員長の挨拶は社員全体の意識を正しく反映するものなのかどうか、
 通信労組と被控訴人との交渉はどのようなものだったのか、通信労組に非難されるような
 対応があったのかどうかは、被控訴人らの新主張に照らしても、控訴審での重要争点であ
 ることが明らかである。


   一審判決も、NTT労組との合意を「雇用形態選択」制度の内容・手法の相当性と結びつ
 けて判断していた。このことからも、この点が控訴審の重要争点であることはいうまでも
 ない。

   岩崎証人は、この点に関する証人であり、このことを的確にかつ短時間で証言する最適
 の証人であった。


   しかしながら、宮崎裁判長は、同証人について、すでに原審で2回にわたって証言して
 いるとして、採用しなかった。2回というのは、主尋問と反対尋問をそれぞれ別に行った
 というに過ぎず、特別に複数回行ったわけではない。にもかかわらず、同裁判長は、この
 2回という回数にこだわった。


  また、被控訴人の控訴審における新たな主張に対応する証言であるにもかかわらず、従前
 証言したとの一事をもって却下した。極めて不当な決定であった。


  申立人らは、主尋問時間を20分に短縮する用意があると申し出たが、それでも採用され
 なかった。


  このような態度は、申立人側の立証はもう見たくない、証言は聞きたくないというものに
 しか映らないのは、当然である。


  同裁判長は、控訴棄却の予断のもとに審理を急いで終わらせようとしているものとしか考
 えられないのである。


 (4)5名全員不採用の事実が物語る「裁判の公正を妨げるべき事情」
  申立人らにとって、上記の5名の証人は、一審判決を覆し、自らの生活と権利を守る正
 義の判決を獲得するために重要かつ不可欠なものであった。


  これらの証人は、すべて、一審判決の判断や控訴審でも双方が激しく争っている論点に
 関する証人ばかりであり、これまでの記録には全く盛り込まれていない事項に関する証言
 がなされるはずであった。


  これらについて、すでに記録にあるとかすでに一度証言したなどという理由で採用しな
 い結論に固執する裁判長の姿は、誰の目から見ても、被控訴人側の社会通念に反する主張
 にひたすら同調するものにしか映らない。


  審理を尽くさずに、控訴棄却の予断をもって、審理を急ごうとするものとしか考えられな
 いのである。


 申立人らは、証言の時間を短縮するとか証人の人数を絞るなど訴訟遅延にならないこと努
 力をすることを申し出た。一期日で終わらせることも提案した。


  控訴審ではまだ2回の口頭弁論しか行われていない。双方から、形式的なものを除いて
 合計12通(申立人側5通、被控訴人側7通)もの準備書面が提出され、審理はまだ判決
 するに熟していない。

  なぜ、わずか一期日の証拠調べができないのか、なぜ、審理を尽くそうとしないのか、
 その合理的理由を見出すことは不可能である。


  申立人側の5名の証人申請を何が何でも却下し、ただの一人も採用しないという結論に
 固執する宮崎裁判長及びこれと合議をして決定した山本裁判官、今泉裁判官の姿は、でき
 るだけ申立人側の証拠は見ないで、急いで控訴を棄却しようとするものとしか考えられな
 い。

  宮崎裁判長ほか2名の裁判官に、裁判の公正を妨げるべき事情があるのは明らかである
 。

 (5)公正な裁判を受ける権利が侵害されている
   申立人らには、憲法で定められた公正な裁判を受ける権利がある。

   一審で全面的に敗訴した申立人らには、審理を徒に遅延させることとなるものでない
  限り、一審判決の事実認定及び被控訴人側の主張(とりわけ控訴審での主張)を十分に
  争う権利が保障されなければならない。


  申立人らは、巨大企業である被控訴人らの従業員であり、被控訴人らを相手にその労
  務施策の妥当性を争う訴訟の当事者としては、証拠の収集に一定の限界がある。控訴審
  としては、こうした事情に即して、立証において公平な機会を保障する対応をすること
  こそが、公平な裁判所としての責務である。


    国民は、公平な裁判所による公正な審理を受ける権利を保障されている。控訴裁判所
  として、一審で全面敗訴した申立人らの申請証人、しかも、双方が控訴審でも激しく争
  っている重要な論点に関する証人を、まだ2回しか期日を開いていないのに、ただの一
  人も採用しないというのは、申立人らはもちろんのこと、一般人の目からみても、不公
  正かつ不公平である。


    訴訟指揮に対する不服は、忌避事由にはあたらないと言われている。しかしながら、
  極端に偏頗な訴訟指揮は、忌避事由にあたると解されているし、そもそも、忌避は、当
  事者や市民に対して裁判の公正さとその外観を確保するための制度であるから、その判
  断基準が一般市民から離れたものであっては、制度の存在意義自体が失われる(「注解
  民事訴訟法【1】(青林書店・2002年10月初版)」229頁)。訴訟指揮に関す
  る事項だからといって、それだけですべて忌避事由から排除するのではなく、その徴表
  としての意味に常に留意すべきである(同232頁)。


    司法制度改革が進み、市民の司法参加が言われる今、忌避事由の判断は、一般市民の
  目線で行われるべきであって、訴訟利用者の信頼を維持する観点から公正に行われるべ
  きである。

   申立人らの意見に一切耳を傾けず、申立人らが請求した5名の証人の尋問をすべて却
  下した宮崎裁判長ほか2名の裁判官に、裁判の公正を妨げるべき事情があることは明ら
  かである。







             疎  明  資  料


1 甲第1号証  証拠申出書(1)(平成1979日付)
2 甲第2号証  意見書(平成1979日付)
3 甲第3号証  訴訟進行についての意見(1)(平成191031日付)
4 甲第4号証  意見書(平成191031日付)
5 甲第5号証  証拠申出書(平成191031日付)
6 甲第6号証  訴訟進行に関する意見(2)(平成191031日付)
7 甲第7号証  意見書(平成191030日付)
8 甲第8号証  陳述書(平成19115日付 坂本修作成)
9 甲第9号証  陳述書(平成19115日付 鎌倉清美作成)

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